陸自発砲 問われる銃管理態勢 指導役は防弾チョッキ未着用

隊員が事件を起こす「兆候」に気付くことはできなかったのか-。岐阜市の陸上自衛隊射撃場で3人が死傷した小銃発射事件は、「武器を扱う組織」(森下泰臣陸上幕僚長)で発生しただけに、訓練や管理態勢が適切だったかが問われそうだ。犯行の動機は明らかになっていないが、専門家は隊員のメンタルケアの在り方についても検討を始める必要があると指摘する。
陸自によると、毎年4月に入隊した自衛官候補生は6月末まで訓練する。殺人未遂容疑で現行犯逮捕された男(18)も、小銃を分解して組み立て再度使用できる状態まで戻す作業などを通じ、銃の構造を理解する教育などを受けていた。この日は、候補生として最終段階となる「検定」が行われていたという。
「今の時期は取り扱いに慣れてきた頃だろう」。こう語るのは、元陸自衛生科2等陸尉の照井資規(もとき)氏だ。通常は射撃する候補生一人一人に指導役の自衛官が付き、銃を構え安全確認を行った上で、射撃の直前に銃弾が手渡される。銃弾は1回に5~9発と限定されているという。
銃器の取り扱いでは、安全管理専従の担当者を配置するなど二重三重の安全機構が働いているはずだったが、凶行を防ぐことはできなかった。照井氏は「このような体たらくはあり得ない。管理態勢はどうだったのか」と疑問視する。陸自によると、指導役の隊員、候補生いずれも防弾チョッキを装着していなかった。
自衛官が射撃場内で銃を発射する事件は初めてではない。山口市の射撃場で昭和59年2月、当時21歳の2等陸士の男が同僚隊員に自動小銃を乱射。男は心神喪失状態だったとされた。
日本大危機管理学部の福田充教授は「自衛隊では社会から隔離された閉鎖空間で共同生活を送ることになるため、特に隊員のメンタルケアは重要だ」と強調する。令和4年版防衛白書によると、3年度の陸上自衛官の自殺者は38人に上る。
逮捕された男は入隊してまだ3カ月足らずだった。陸自関係者は「まだ自衛官ではない候補生は特に丁寧に個別対応している」とし、今後も体調や心理面などの把握に努めるとしているが、照井氏は「諸外国と比べ、自衛隊のメンタルケアは機能していない」と危惧する。福田教授は「集団生活や訓練の内容を改めて検証し、再発防止につなげる必要がある」との見方を示した。