【日本の宿題】親族いるのに受け取りを拒否…増加する「無縁遺骨」の行方 自治体や民間の支援必要

8287柱-。これは昨年度、全国20の政令指定都市で数えられた「無縁遺骨」の数である。無縁遺骨とは、亡くなった後に誰からも引き取り手がなく、自治体が管理する遺骨のことをいう。
「無縁遺骨増加問題」に詳しい神奈川県横須賀市役所の福祉専門官、北見万幸氏は「以前は身元不明者が無縁遺骨になっていました。でも最近は、身元判明者がそうなっています」と語る。
そう、今は家族や親戚がいるのに遺骨が引き取られないケースが増えているのだ。これまでの日本社会では考えられなかったようなことが、今現実に起こっている。
こうしたなか、「市民への終活支援」を行う自治体がある。
横須賀市では、低所得・低資産で、頼れる身寄りのない高齢市民が、市内の協力葬儀社と低額で生前契約を結ぶことができる「エンディングプラン・サポート事業」を行っている。また、自身が倒れたときに備えて、緊急連絡先や墓の場所なども市役所に登録できる。
これらを利用することで、遺骨が希望通りに納骨され、無縁遺骨として処理される心配はなくなる。この事業に登録した市内で一人暮らしをする70代女性は「今は不安はなくなり、安心して心豊かに過ごせています。本当に良かったです」と話す。
前出の北見氏は「無縁遺骨を単に減らせばいいということではない。生前に希望を聞く制度づくりが大切」と語る。
民間の力も大事だ。
私は先日、「無縁遺骨」が無縁でなくなる瞬間に立ち会った。関東地方の80代女性が孤独死し、葬儀社が火葬した。親族がいたが引き取ってもらえず、無縁遺骨として自治体が処理することになっていた。
だが、葬儀社の経営者が親族に、女性の暮らしていた市内に比較的安価な永代供養をしてくれる寺があることを話し、納骨を提案した。親族は「それならば」と了承したのだ。
この経営者は、これまでも数柱の無縁遺骨を家族が供養する「縁のある遺骨」にしており、「低価格で永代供養ができる寺があることを親族に伝えられれば、全国の無縁遺骨を減らすことができるのでは」と語った。
2つのケースを紹介したが、今後も無縁遺骨は増え続けるだろう。
戦没者遺骨収容の現場では、遺族たちがご遺骨が誰のものか分からなくても、「お父ちゃん」「親父」と呼びかけて大切に扱う。一方、現代は葬儀を行おうにも子供や家族の数も減り、個人の葬儀への希望も分からなくなりがちだ。私たちの未来が、このような形で良いわけがない。
現在の日本社会では、家族の絆や地域社会のつながりが薄れ、孤独死も増えている。誰もが、みんなに囲まれた臨終を迎えられるわけではない。そんな今だからこそ、自治体や民間が死後の遺骨の行方を支援する仕組みが必要とされているのではないだろうか。
■佐波優子(さなみ・ゆうこ) 1979年生まれ。戦後問題ジャーナリスト、チャンネル桜キャスター。陸上自衛隊予備自衛官・陸士長。「大東亜戦争を戦った全ての日本軍将兵の方々に感謝を~9年間の遺骨収集を通じて感じたもの」で、アパグループ「真の近現代史観懸賞論文」最優秀藤誠志賞受賞。慶應義塾大学大学院に在籍し、「無縁遺骨増加問題」を研究。専門は葬祭福祉論、安全保障、戦没者遺骨収集など。著書に『女子と愛国』(祥伝社)。