◆維新が活用したYouTube広告 前回は、統一地方選挙における維新の会の勝ち方の「特殊性」を、主に東京都内の選挙結果を題材にして検討した。注目したのは維新の広告戦略だ。統一地方選挙期間中、維新の会は極めて大規模かつ精緻な広告を展開した。主戦場はネット。とりわけYouTubeの動画広告だった。 テレビや新聞の広告と違い、YouTube広告は地域別にターゲットを変えた広告出稿が容易で、それぞれの視聴者の居住地域にあわせて広告を細かく切り分けて表示することが簡便にできる。いわずもがな、統一地方選挙は自治体ごとにあらそわれる。地域ごとに細分化して小さな地域限定の広告を打てるYouTube広告は、大規模国政選挙よりも地方選挙にこそふさわしい。 維新は今回の統一地方選挙でこの手法を大々的に採用した。そして東京都内ではこの手法が奏功した。人口集積度の高い東京都内では、地域ごとに細かく細分化した広告でも、十分に「集票マシーン」として機能するからだ。 だがこれは逆に言えば、この手法は人口集積度の高い東京都内や神奈川県の一部などでしか通用しないということになる。現実の結果もそうだった。この手法で維新が議席を伸ばしたのは都市部、それも相当数人口規模の多い地域に限定されている。「統一地方選挙で維新が躍進した」という事実は間違いないものの、その内実は、全国的傾向のあるものではなく、各地域によってそれぞれ「勝ち方」の要素が違うものである……。ここまでが、おおよそ、先月号の内容だ。 ◆はなから保守分裂選挙だった 繰り返すが、「2023年の統一地方選挙で維新が躍進した」という事実に間違いはない。これまで議席がなかった地方にも新たな議席は生まれているし、全国各地の議席を合計すれば、確かに増えている。だがしかし、それを事実と踏まえても、この全国的な維新の伸長を、〝一つの理由〟に求めることができるのか? というのが、本稿の疑問なのだ。 たとえば、今回の統一地方選挙では、大阪府以外での「維新首長」が相次いだ。国政の補選でも維新が勝利を収めている事例もある。こうした大型首長選挙や大型国政補選での「維新躍進」のトレンドは広い目で見れば、2021年兵庫県知事選挙を皮切りに、2022年石川県知事選挙、長崎県知事選挙などから打ち続く流れとも捉えられなくもない。 しかし、兵庫、石川、長崎、そして今回の奈良と、維新公認および推薦候補の勝利した知事選挙には、「保守分裂選挙だった」という共通点がある。維新が強いだの弱いだのの前に、自民党がはなから割れているのだ。