多くのコンサートが開かれ、「音楽ファンの聖地」として親しまれてきた中野サンプラザ(東京・中野区)が2日に閉館する。
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中野サンプラザ前で足を止め、外観を記念撮影する人が続出し、閉館を惜しむ声が相次いでいる。
6月末、汗を拭いながら外観を撮影していた杉並区在住の50代男性は、大学生時代に何度もモーニング娘。のライブに足を運んだという。「かおりん(飯田圭織)となっち(安倍なつみ)推しで、ここに来るのが楽しみでしょうがなかったことを覚えています」と振り返った。ホールについて「形は独特で割と狭いので、臨場感があっていいんですよね。なくなっちゃうのは本当に名残惜しい」と率直な思いを口にした。
同施設はコンサートホールの他に、ホテルや結婚式場、ボウリング場などもある。40年前に結婚式を挙げた埼玉・所沢市在住の60代男性は、妻と共に記念撮影に訪れ、館内も見学した。「閉館すると知って、急いで来た。当時は高い建物が周りになく、かなり目立っていた。式場は数十人が入る、こぢんまりとした雰囲気がよかったんです」。続けて「一番コンサートを多くやってきた山下達郎さんも『聖地だからなくさないでほしかった』とおっしゃってましたが、僕も同じ気持ち。僕たち夫婦にとっても思い出の場所だから、壊されちゃうのはさみしいな」と残念そうに話した。
老朽化に伴う建て替えのための閉館。総事業費1810億円をかけ、跡地にはオフィスや住宅、店舗などが集まる大型複合施設「NAKANOサンプラザシティ」が28年度に完成予定だ。区民からは「再開発も大事なのかもしれないけど、ここを残す方法はなかったのかな」、「いつまでもずっとあるものだと思っていたから余計に悲しいんですよね」といった声が多く寄せられた。(坂口 愛澄)
◆中野サンプラザ 1973年6月1日、特殊法人の雇用促進事業団が建設し「全国勤労青少年会館」としてオープン。愛称が一般公募され、エネルギーの象徴「太陽=SUN」、人々が集う場所「広場=PLAZA」から「サンプラザ」に。2004年に「株式会社中野サンプラザ」として民営化された。JR中野駅北口に位置し、白い三角形が特徴。地上20階・地下3階。18年、酒井直人区長が建て替え方針を表明した。