レントゲン画像で心疾患を発見 医師とは異なるAIの「目」

大阪公立大の研究チームが、胸部のレントゲン画像から心臓の疾患を見つける人工知能(AI)を開発したと発表した。胸部レントゲン画像は主に肺の疾患の診断に使われているが、AIは医師が気付いていなかった特徴をもとに、心不全や心臓の弁の障害などを高精度で見つけてきたという。AIの「目」は何を見て判断したのだろうか。
健康診断などで撮る胸部レントゲン画像には心臓が写っているものの、心臓の病気の診断にはほとんど使われていない。心不全などの検査では一般に超音波による心臓エコーが用いられるが、高度な技術が必要な上に、技術者が不足している問題がある。
そこでチームは、2013~21年に大阪府内の4医療機関で、心臓エコーの検査後に撮影された胸部レントゲン画像2万2551枚を集めた。人の脳の仕組みを応用した「深層学習」と呼ばれる技術で大量の画像をAIに学習させ、胸部レントゲン画像と、心臓エコー検査で判明した病気の関係を導き出させた。
その結果、AIはレントゲン画像から、心不全につながる心機能の悪化や、心臓の弁の障害である心臓弁膜症などを68~86%の精度で見つけることができたという。チームの植田大樹・大阪公立大研究員(放射線診断学・IVR学)は「臨床現場で胸部レントゲン画像は撮影されていることが多く、このAIモデルを使えば、すぐに心機能に関する情報を得ることができる」と強調する。今後、実用化を目指すという。
ではAIは画像のどこに注目して、心臓の疾患を見つけてきたのだろうか。結果を解析してAIが注目した領域を可視化すると、AIは医師とは全く違う場所を見ていたことが判明した。
臨床現場では、胸部レントゲン画像を使って、疾患による心臓の拡大を確認することがある。胸の最も広い部分と心臓の横幅の比を見る手法だが、精度は良くなく、実際はあまり使われていないという。
一方でAIは、心臓の収縮力を表す「左室駆出率(さしつくしゅつりつ)」の悪化を判断する際、これとは違った方向の心臓の幅に注目していたことが分かった。また心臓弁膜症の一つである「僧帽弁逆流症」では、心臓の四つある部屋のうち、左心房や、周辺の血管を見ているようだった。別の心臓弁膜症である「大動脈弁狭窄症(きょうさくしょう)」では、大動脈弁付近に注目していた。いずれも医師が普段は注目しない場所という。
医療現場でのAI活用は、特に画像診断の分野で進んでおり、診断の一部をAIに任せて医師の負担軽減を図るなどしている。これは、医師とAIが同じ判断基準で診断しているパターンと言える。
一方で、今回の研究はAIの目でしか見えない特徴を利用して、診断の可能性を広げる試みだ。医学部の学生時代にプログラミングを独学し、臨床を続けながら医療でのAI活用を研究している植田さんは「僕の研究テーマは、AIにしか見られない世界をどんどんつくっていくこと。それによって、これまでできなかった医療の領域に到達したい」と話している。
研究成果は、7日付の英医学誌「ランセットデジタルヘルス」に掲載された。【柳楽未来】