36人が死亡した2019年の京都アニメーション放火殺人事件は18日で発生から4年。事件で犠牲になった池田晶子(しょうこ)さん(当時44歳)の長男は、小学6年になった。急に大人びて、顔つきは母親によく似てきたと夫(50)は感じている。あの日から時がたつにつれて、少しずつ親子で思い出話もできるようになってきた。
「『ママそっくりになってきたで』と思わず言うと、うれしそうにしていた」と夫は話す。「子どもの心に保存されている母親の記憶は少ない。最近になって、記憶を足してやりたいと心掛けるようになった」
晶子さんは、国内外でヒットした学園ドラマ「涼宮ハルヒの憂鬱」や、高校吹奏楽部の青春を描いた「響け!ユーフォニアム」など人気アニメのキャラクターデザインに携わり、日本の女性アニメーターの草分けとして知られた。
父子は事件から1年ほど、互いに晶子さんのことは口にできなかった。「僕は子どもを前に向かせようと必死で、子どもは僕にかなり気を使っていた」。周囲の同情に甘えてほしくないと、厳しくも接した。次第に長男は医師になるという夢を持つようになり、2人で中学受験を目指している。休日を共に過ごすうち、徐々に晶子さんの思い出を話せるようになっていった。
ただ、夫は葛藤を抱えている。「信念を持って子育てせなあかんと思いつつ、正しいかどうか分からない。晶子の遺影に問うと、怒っている顔しか浮かばない」。晶子さんとは教育方針を巡って衝突も絶えなかった。長男は事件後、優し過ぎるほど気持ちが優しい子になったのも気に掛かる。「文句ひとつ言わず、本当に頑張っている。子どもは『遺族』ではなく『犠牲者』そのものではないか」と目を赤くする。
「子どもが将来、社会に出て、胸を張って生きていけるようにするのが僕の絶対的な責任」と考えている。9月に始まる青葉真司被告の裁判員裁判も傍聴するつもりだ。「いつか子どもが『なんでママが殺されたのか』と立ち止まったとき、説明してやらないといけない。(被告が)なんであんなことをしたのか、真実を追究してほしい」【南陽子】