《令和3年の京王線無差別刺傷事件。服部恭太被告(26)は東京地裁立川支部の裁判員裁判で、被告人質問に答える形で犯行当時の様子を説明している》
《服部被告は京王線特急の3号車で乗客を刺し、5号車でライターオイルをまいた。このとき、ライターの火が自分の手袋に引火し、「焦って」ライターを投げたという。その後、後方の車両に移動した》
弁護人「後方の車両に移動したのはなぜですか?」
被告「黒い煙がかなりあがっていて息苦しく、危険を感じたからです」
弁護人「何号車まで移動しましたか?」
被告「最終的には2号車まで」
弁護人「(被告がナイフで刺した)Aさんの前を通りましたか?」
被告「はい」
弁護人「Aさんの状態は?」
被告「壁にもたれて脱力していましたが、肩や胸が動いていたので、生きていると認識しました」
弁護人「なぜ生きていると認識したのに、何もしなかったのですか?」
被告「計画が失敗したことに落ち込んでいました。刺した手応えがなく、ナイフで人を傷つけることが簡単ではないと思いました」
《Aさんの前を通り過ぎた後、被告は車両内の座席に座り、着けていたマスクをあごへずらしてたばこを吸った。この様子を撮影した写真は事件発生後、交流サイト(SNS)で拡散された》
弁護人「たばこを吸っているときの表情はどうでしたか?」
被告「基本、無表情でしたが、(特急が停車した国領駅の)ホームからスマートフォンで撮影されているのを見て、笑ってしまいました」
《犯行当日の動きに関する質問がひと段落し、弁護人の質問は服部被告が事件を起こすに至ったいきさつに移った》
弁護人「家族は誰がいますか?」
被告「母と妹です」
《父親は、被告が小学生のころに家を出て両親は離婚。その後は、ほとんど連絡を取っていないという》
弁護人「小学校ではどんなことがありましたか?」
被告「クラスメートとの関係が悪くなりました」
弁護人「それはどうしてですか?」
被告「当時住んでいた家が、ゴキブリが出る古い家だったからです」
弁護人「それが学校に知れたのはどうしてですか?」
被告「(自分の)ランドセルの中から虫が出てきたからです」
《この出来事が原因で主に女子からいじめを受けるようになった》
弁護人「中学校ではどうなりましたか?」
被告「(いじめが)エスカレートしました」
弁護人「具体的には?」
被告「シカト(無視)や、物やごみを投げられ、仲間外れにされました」
弁護人「どんな気持ちでしたか?」
被告「とてもつらく、学校に行きたくありませんでした」
《被告は自殺を図ったという》
被告「学校に行かず、制服姿で家の屋上へ行き、ロープで首をつりましたが、何かの拍子にロープが外れて死ねませんでした」
《被告はその後、中学へ復帰し、2年の途中から陸上部に入部。3年時には大きな出来事があった》
弁護人「3年生の時、どんなことがありましたか?」
被告「後輩の女の子と付き合うことになりました」
弁護人「どんな気持ちでしたか?」
被告「うれしかったです」
弁護人「そういう気持ちになった理由は?」
被告「中1でいじめにあい、女子に対する恐怖やトラウマがありました。自分のことをゴキブリのような汚い存在だと思い、人と接することに臆病になっていた。そんな自分を好きになってくれる人がいて付き合えたからです」
《高校では空手部に入り、3年時には主将を務めた。高校卒業後の平成27年4月には、希望していた介護職に就いた。だが、半年で退職することとなる》
弁護人「熱望していたのに半年で退職した理由は?」
被告「人間関係がうまくいかなかったからです」
弁護人「具体的には?」
服部被告「(同僚が)ほとんど女性で年齢も大きく離れていたので、なじめませんでした。1人からは、自分のことを拒絶するような、かなりきつい反応をされ、ストレスでした」
弁護人「その結果どうなりましたか?」
被告「自殺を図りました」
弁護人「どのように?」
被告「家の屋上でロープで首をつりました。意識を失い、病院のベッドで目を覚ましました」
弁護人「その時は何歳でしたか?」
被告「18歳でした」