東京・神宮外苑の再開発を巡って三井不動産ら事業者が17日に開いた住民説明会で、〝ホームラン論争〟がぼっ発していた。高層ビルが建つことでビル風が発生することが予想されているが、住民から「風が神宮球場に影響してホームランにならないことが起きてしまわないか」と危惧する質問が飛んだのだ。
計画では神宮球場と秩父宮ラグビー場が場所を入れ替えて建て替えられる予定。また、商業施設が入る高層ビルが2棟建つことになっている。再開発にともない樹木が大量に伐採されることに、反対の声が高まっていた。
説明会は午後6時半から千代田区内の会場で開催。午後8時半には会場から撤収で、質問は1人2問までと制限された。また、参加できる資格も外苑から約380メートル以内に済む住民らに限定。17日から3日間開催され、初日は150人ほどが参加したという。
参加した男性住民は「ガス抜きですよ。都知事に『やれ』と言われたから形だけ整えているだけ。議論しないんです。これは事業者が説明する会。今度は住民の話を聞く会をやってもらわないといけない」と不満を漏らした。
ある女性参加者によると、神宮球場を巡ってホームラン論争も繰り広げられたという。「『200メートル近い高層ビルが2棟建つことで神宮球場への風の影響が発生して、その風が原因でホームランになるはずの打球がホームランにならないんじゃないか』という質問が出ていました。事業者は『その調査はして問題はありません』と回答していました」と明かした。
この回答にこの女性参加者は首をかしげる。「計算違いじゃないかと思うくらい信じられない。というのも、今でもビル風がすごいんです。青山通りは歩けないほど風が強い時もあるんですよ。(事業者に)『ご自分で歩いてみたらどうですか』って聞きたかったくらい疑問です」と漏らした。
高層ビルによるビル風でホームランになったりならなかったりすることがあれば、プロ野球選手もファンもたまったものではないだろう。
今回の説明会では事業者と住民らの間のミスマッチも明確になった。説明会冒頭30分は事業者による動画が流されたというが、高層ビルについては触れられていなかったという。
「『なぜ動画に高層ビルの話がないのか』という質問もありましたが、事業者は『みなさんの関心が一番あるのはスポーツエリアの整備についてだと思いました』と言うんです。完全にポイントがズレてると思いましたね。一番知りたいのは、なぜ高層ビルを建てるのかですよ」(前出の女性参加者)
380メートル制限で参加できなかった人からも、不満の声が上がっている。「開かれた説明会にしてほしい。質問があれば公式サイトで答えますじゃない。直接のやり取りが大事なんです」(ある参加希望者)
参加者からはまた説明会を期待する声も事業者にぶつけられたというが、「物理的にできない」という回答があったという。これだけ不満だらけで、このまま再開発が計画通りに行くのだろうか。