イルカなぜ凶暴化?水族館関係者は〝エサやり〟の弊害を指摘「手を狙ったのかも」

16日午前4時10分ごろ、福井県美浜町竹波の水晶浜海水浴場で、泳いでいた岐阜県可児市の60代の男性会社員にイルカ1頭が近づいてきてぶつかり、肋骨(ろっこつ)骨折などの重傷を負った。両手もかまれたという。現場は沖合5メートル付近。男性は親類らと訪れていた。この海水浴場では同日、男性以外にも3人がイルカにかまれるなどして軽傷を負った。
敦賀署によると、水晶浜では5月28日以降、イルカにかまれる被害や目撃情報が相次いでいるが、ぶつかって負傷したケースは珍しいという。福井県外の海水浴客も多く、署は遊泳中に見かけても近づかないよう呼びかけている。
イルカが人間を襲うことはまれにある。2019年、ハワイで遊泳中の女性がイルカにかまれるなどして、脊椎骨折、肋骨骨折などのけがを負った。13年、アイルランドで女性が肋骨骨折のケガをした。
海洋保護活動を行っている米団体「メリカン・オーシャンズ」のサイトではイルカの攻撃性を説明している。
「イルカはフレンドリーな性格にもかかわらず、やはり野生動物であり、敬意を持って扱うべきです。野生のイルカに近づいたり、触れたりすることはお勧めできません。これはストレスを引き起こし、自然な行動を乱す可能性があります」
縄張りに入った人間の存在に脅威を感じたり、興奮したりするかもしれないからだ。さらにイルカは遊びの一環として人間を攻撃することもあるという。あまがみや突っつきはイルカにとってはおふざけでも、人間にとっては骨折どころか死亡してしまう。
また、クマなど他の野生動物同様、小さな子供がいる時は、子供たちに危険を及ぼすかもしれない存在に対して、過剰に攻撃的になるという。
水族館関係者は「今回の件では、イルカが被害者の両手をかんでいます。誰かがこのイルカにエサを与え、人間がエサを持っている存在だと認識した可能性があります。だから、エサを催促したり、エサを持っているであろう手を狙ったのかもしれません。野生のイルカにエサを与えると、エサに依存し、攻撃的になる事例があります」。
水族館のイルカショーではイルカの知性や人懐っこさを感じるが、あくまで飼いならされ、訓練されたイルカだからだ。