日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関から、官僚の人事情報をいち早くお届けする名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年8月号より一部を公開します。
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副長官の悪評止まぬ
夏の霞が関人事でにわかに浮上したのは、栗生俊一官房副長官(昭和56年、警察庁入庁)の交代説だ。2年前の岸田文雄政権発足以降、霞が関官僚のトップの座に君臨するが、存在感は薄まる一方だ。いまや「栗生副長官を通さないといけない政策案件はほぼない」(霞が関幹部)と評される有様で、「首相周辺も働きぶりに不満を抱えている」(政府関係者)という。
旧統一教会と自民党との癒着などで、政権の対応はいつも後手後手。マイナンバーをめぐるトラブルひとつとっても、官邸に情報が集まっていなかった。
経済官庁幹部は「栗生氏にトラブル案件を報告しても『一体どうするんだよ』と役所の責任を問うばかり。最近の政策にも明るくはない。自然と足が遠のく」と話す。
栗生氏の悪癖は「無類の人事好き」。警察庁長官時代などには「好き嫌いで人事を動かし、向こう10年に渡って禍根を残した」(警察幹部)と言われる。特にお気に入りは中村格前警察庁長官(61年)。安倍晋三元首相射殺事件を受け、警察トップとして即辞任すべきとの声があがったが、再発防止策を取りまとめた上で「勇退」の形となったのは栗生氏の意向によるところが大きい。
事務副長官は総務、国交、厚労などを含む旧内務省系省庁出身で回してきたが、二代続けて警察出身者が務めている。「いい加減、警察は一度ポストを手離すべきだ」(経済官庁幹部)との声が上がるが、一部の警察キャリアが思い描くのは、三代続けての警察出身副長官の誕生である。
その構想の下、トップに座るのは他ならぬ中村氏で、「本人もまだまだ枯れていないようだ」(政府関係者)。
デジ庁「暴走の代償」
マイナンバーカードをめぐるトラブルに歯止めがかからず、デジタル庁が窮地に立たされている。
河野太郎デジタル相は多少の混乱は覚悟で、マイナカードの普及を急いできた。その典型例が保険証との一体化案だ。マイナカード普及の決め手とされるが、各地に拠点を持たないデジタル庁は厚労省の地方機関や自治体に実務を頼らざるを得ない。
庁内を取り仕切る赤石浩一デジタル審議官(60年、旧通産省)はその弱点をよく分かっていたが、河野氏を止めることはできなかった。
赤石氏は若手の頃から、資源エネルギー庁長官だった髙橋泰三氏や元経産審議官の田中繁広氏らと並び、同期のエース級として知られ、米州課長や会計課長を務めた。5年ほど前に内閣府の科学技術・イノベーション担当になり、デジタル庁の官僚トップに起用された。
赤石氏を支える官房長役である財務省出身の冨安泰一郎戦略・組織グループ長と、医療・教育など「国民向けサービス」を担当する村上敬亮グループ長(旧通産省)はともに平成2年入省組だ。「2人とも逆風が強まってからも後輩たちを元気づけている」(課長級)と庁内で頼りにされている。
赤石デジタル審議官ら官僚群と、民間から起用した非常勤の専門家を束ねるのは、東芝や情報処理会社で経験を積み、ソフト、ハードの両面でシステムや言語スキルを身に付けた浅沼尚デジタル監だ。
河野氏は岸田文雄首相らに対し、デジタル庁の態勢強化を働きかけている。人員を現在の約800人からさらに増やすことに加え、総務省の自治行政局や厚労省からの出向を要請しているという。
だが、他省庁からは「デジタル庁だけが突っ走っても、国民全体に行き渡るサービス網はつくれないと、繰り返し訴えてきた。耳を貸さなかったのは河野氏ではないか」と反発の声が渦巻いている。
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「 霞が関コンフィデンシャル 」全文は「文藝春秋」2023年8月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2023年8月号)