医師である父親は帰宅後も家の中に入らず車中生活を送り、パート勤めの母親は荷物が散らかった室内で生活し、精神障害の疑いのある長女は小学校時代から部屋にひきこもり──。
経済的にも恵まれ、幸せそうに見えた一家の実際の暮らしぶりが徐々に明らかになってきた。
札幌中央警察署は25日、職業不詳の田村瑠奈(29)と父親で医師の修両容疑者(59)に続き、母親でパート勤務の浩子容疑者(60)を死体損壊、領得、遺棄の疑いで逮捕した。
24日、道警が自宅を家宅捜索したところ、一部が腐敗した人間の頭部が発見され、歯形から殺害された浦仁志さん(62)のものと確認された。
道警は同居していた母親も何らかの事情を知っていたとみて、2人と同じ容疑で逮捕。これで家族3人全員が逮捕された。
瑠奈容疑者と修容疑者が事件の数日前、犯行に使われたとみられるのこぎりと、スーツケースを自宅から車で10分ほどのディスカウントストアでそれぞれ別の日に購入していた。このことから修容疑者も殺害計画に加担し、周到な準備をしていたことがうかがえる。最近、一家の様子が一変したという。
近隣住民がこう言う。
「ご主人は車で仕事から帰ってきていったん家に入っても、すぐに玄関先に出てきてキャンプ道具でお湯を沸かしてレトルトカレーやカップラーメンを作ったり、車の中でコンビニ弁当を食べていた。車中生活をしていたようです。出入り業者によると、家の中は荷物が散乱し、奥さんは情緒不安定なところがあったみたい。娘さんもひきこもっていたから、家族はバラバラだったんじゃないのかな。3人で出かける姿を見たこともなかったから。以前は手入れされていた庭も雑草が伸びたまま荒れ放題で、家の前に置いてあるクーラーボックスがどんどん増えていった。奥さんは以前は家にずっといたのに、最近になって仕事を始めたみたい。朝7時ごろ家を出て行ってた」
修容疑者は2004年、2200万円を借り入れて3階建ての新築一戸建て住宅を購入。12年には完済している。小学校から不登校ぎみだった瑠奈容疑者は、何とか高校へ進学したが長続きせず、自宅に閉じこもりがちだった。ただ、最近は札幌の繁華街・ススキノで酒を飲むこともあったという。
29歳の瑠奈容疑者と62歳の被害者の接点
7月1日夜、修容疑者は購入したばかりののこぎりとスーツケースを積み込んだ車に瑠奈を乗せ、自宅から約10キロ離れたススキノに向かった。
「被害者の浦さんは、瑠奈とラブホテルの近くで会う直前まで、女装して1人でディスコイベントに参加していた。彼はススキノのディスコや同じ趣味の仲間が集まるバーの常連客で、とにかく女性の交友関係が広かった。それも若い子が好きだったようです。浦さんのスマホはまだ見つかっていないが、携帯電話会社に浦さんの通話記録を照会し、やりとりがあった一人一人に確認したところ、最終的に瑠奈にたどり着いた。2人の間にどんなトラブルがあったか、今後、調べを進める」(捜査事情通)
切断された浦さんの頭部が持ち去られ、一家が住む自宅で発見されるまで23日間。家族3人は生首のある自宅で何を話しどう過ごしていたのか。