八幡和郎「安倍遺産」 自公連立の損得勘定、憲法改正には不可欠なわけ 連立解消すれば強力な野党誕生も

「公明党との連立が憲法改正の支障だ」とか、「自民党は日本維新の会と連立を組めばいい」という声が保守層から聞こえる。
次期衆院選では、自民、公明両党の選挙協力が東京都で成立しないし、関西では維新が公明党と対決姿勢で波乱含みだ。
自民党支持者の不満は、連立政権の政策に、支持率数%である公明党の言い分が多く採用されていることだ。中道寄りの公明党は常にキャスチングボートを取る立場にあることもあるが、公明党の強みは支持率以上に価値ある票の出し方ができることだ。
公明党の支持団体である創価学会員は、国民の数%だが、投票率が高く、浮動票も合わせて約10%の得票率を誇る。しかも、他の政党や団体に比べて、どの候補にどう票を回すか、臨機応変に動くので、競り合いに強い。このことは、拙著『日本の政治「解体新書」 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)で分析した。
憲法改正で、公明党が反対したら、衆院はともかく、参院では3分の2の確保が難しく、それ以上に、国民投票で公明党支持者にこぞって反対に回られたら、絶望的だ。
維新はすでに野党第一党を視野に入れているので、自民党と連立を組むメリットはないし、維新支持者は連立入りしなくても「憲法改正支持」が多い。ならば、憲法改正のためには、自公連立を維持して妥協点を見つけるのが賢い選択だし、安倍晋三元首相もそれを理解していた。
政策で公明党に優位に立つには、票での貢献しかない。現在、自公協力で自民党が得ている票は、逆より多い。だが、今回は、維新が大阪、兵庫の6小選挙区で公明党に対立候補を立て、公明党の危機感は強い。東京都での調整もさることながら、関西で公明党候補勝利に貢献したら、かなりの貸しになるはずだ。
もちろん、保守純化で自公連立をやめる選択肢もある。ただ、維新や公明党、国民民主党、立憲民主党の一部がまとまった、強力な野党の誕生を覚悟すべきだ。二大勢力が拮抗(きっこう)して民主主義としては健全だが、自民党が野党である時間も長くなるが、支持者は我慢できるのか。
■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書・共著に『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか―地球儀を俯瞰した世界最高の政治家』(ワニブックス)、『日本の政治「解体新書」世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書439)、『民族と国家の5000年史』(扶桑社)など多数。