絶滅危惧のイヌワシ・クマタカ衝突を懸念…風力発電計画「待った」続々、見直し勧告47件

二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすため「クリーンエネルギー」の一つとして国が推進する風力発電を巡り、イヌワシやクマタカなど絶滅危惧種の 猛禽 (もうきん)類が風車に衝突死する恐れがあるとして、国や自治体が建設計画に「待った」をかけるケースが相次いでいる。鳥類の衝突死は国内外で数多く報告され、「脱炭素」と「種の保存」の両立という難題を突きつけられている。(岩崎祐也)

「イヌワシへの影響が懸念される」「クマタカの衝突が発生する可能性が高い」。経済産業省は5月、滋賀、福井両県にまたがる山林で風力発電施設の建設を計画する「グリーンパワーインベストメント」(東京)に「抜本的な事業計画の見直し」を勧告した。
同社は830ヘクタールの敷地に高さ188メートルの風車39基の建設を計画。両県によると、同社から2022年3月、環境アセスメント(影響評価)法に基づき、環境への影響を記した「準備書」が提出された際、イヌワシについて「生息地ではない」などとしていた。
だが、自然保護団体などによると、イヌワシのつがいは2組が生息し、クマタカのつがいも11組いた。風力発電施設建設に関する環境省の指針では、鳥類の保護に配慮した立地や衝突防止策などを示すことを求めている。滋賀、福井両県や環境省は、同社の取り組みは不十分とする意見書を経産省に出し、勧告に至った。同社は勧告後の取材に対し「勧告を精査し、今後の対応を検討する」とした。 経産省のホームページによると、準備書に勧告を出したのは、過去5年間で61件。このうち、「希少猛禽類の衝突事故が懸念される」としたのは、滋賀、福井に加え、福島、静岡、高知、鹿児島など、約8割の計47件に上った。勧告に法的な強制力はないが、具体的な対策を示さねば建設の認可を得るのは困難だ。

風力発電施設の建設熱は近年、急速に高まっている。環境省野生生物課の担当者は「全国の山林で建設計画が進んでいる」と話す。
背景には、地球温暖化防止に向け、国が脱炭素化を推進していることがある。発電用風車は2019年度現在、全国に約2500基。全発電量の0・7%にとどまるが、国が21年に策定した第6次エネルギー基本計画では30年度に5%へ引き上げると明記した。技術革新で発電コストが下がり、採算性への期待が高まっているのも一因だ。
一方で、希少猛禽類への配慮が不十分なまま計画を立てる事業者はあとを絶たない。公益財団法人「日本自然保護協会」(東京)によると、18年以降に明らかになった陸上の風力発電施設の予定地267か所のうち、52%にクマタカ、21%にイヌワシの生息域が含まれていた。
国内でイヌワシは約500羽、クマタカは約1800羽しか生息していないとされる。同協会は「生息域での建設は避けられるはず。全体的に環境への配慮を欠いている」と批判する。