企業向け保険契約でカルテルを結んだ疑いがあるとして、公正取引委員会は7日、東京海上日動火災保険▽損害保険ジャパン▽三井住友海上火災保険▽あいおいニッセイ同和損害保険――の4社に対する独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑の調査を開始した。今後、事情聴取や資料の提出を4社に求めていく方針だ。
関係者によると、4社は、私鉄大手の東急グループ向けの火災保険と、仙台空港の運営会社「仙台国際空港」向けの保険契約で、事前に保険料の価格調整をしていた疑いが持たれている。企業向け保険のリスクを複数の損保会社で分担する「共同保険」の仕組みを利用し、4社の話し合いによって保険料を高止まりさせていた可能性があるという。
4社を巡っては、東急グループ向け火災保険のカルテル疑惑を端緒に、金融庁が今年に入って、保険業法に基づく報告徴求命令を出し、一連の調査で仙台国際空港向け保険でも同様の疑いが浮上した経緯がある。
その後も京成電鉄や千葉都市モノレールをはじめ、複数の業種向け保険でカルテル疑惑が広がっているが、公取委は一旦、東急グループと仙台国際空港の2件についての調査に着手することにしたとみられ、7日に4社に対して調査開始を連絡した。
公取委の調査対象は今後広がる可能性があり、カルテルによる売り上げが認定されれば課徴金納付命令の対象となる。
カルテル疑惑で、金融庁による報告徴求命令が先行するのは異例で、公取委は疑惑が公になっていることから、立ち入り検査ではなく、任意での調査をスタートさせたという。企業向け保険市場における4社のシェアは9割に上り、実態を詳しく調べる。【渡辺暢】