相次ぐ「殺処分ゼロ達成」の発表は喜ばしい。けれどその道程は決して楽ではなかったはずだ。そしてゼロを維持するとなると事はさらに深刻だろう。時代は変わったのか。それともまだまだこれからなのか。“ゼロの裏側”を探るべく現地を訪ねた。 ◆「殺処分ゼロ」の裏に“保護団体頼り”の現状 体中にまとわりつくような蒸し暑さの中、糞尿とエサと消毒液のにおいが漂い、混じり合う。牙を剥き出しにして、一心不乱に吠え続ける犬もいれば、折り重なるようにひしめき合い、無言でこちらを見つめて警戒する犬たちもいる。茨城県の中部に位置する茨城県動物指導センター。数年前まで、ここでは多くの犬猫たちが殺処分されていた。 環境省が公開した’21年度の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、全国の犬猫の殺処分数は1万4457頭。過去最少殺処分数を更新した。 全国的にも、熊本県や神奈川県、石川県が続々と「殺処分ゼロ」を達成している。茨城県も’05年度から8年連続で犬の殺処分が全国最多という状況から脱して、’21年度に初めて殺処分ゼロとなった。 ◆日々増え続ける行き場を失った犬たち しかし、ゼロという数字の裏側には手放しでは喜べない事情が横たわる。同センターの愛護推進課の担当職員は、「現在センターに収容されている犬の頭数は、想定を超えた161頭(6月29日現在)。なかには、譲渡先が見つからなかったり、攻撃性や病気などの問題で“譲渡不適”と判断されたり、2年以上も長期で収容されている犬もいる」という。 これは茨城県に限った話ではないが、行き場を失った犬たちの命運を分けるのは、民間の愛護団体をはじめとした“ボランティア頼み”となっているのが現状だ。 「収容されるのは、人の無責任なエサやりで繁殖してしまった野犬や、放し飼いで迷子になった犬などです。収容頭数自体はゆっくりと減っていますが、犬猫はそれぞれ年間1000頭前後が収容されます。茨城県は気候が温暖で、可住地面積が広いことから、野犬にとって環境がよく、増えやすい。もともとこの施設も、長く犬を保管する場所ではありません」(同職員) ◆殺処分ゼロを目指す条例を制定 処分はしない。しかし、施設は常に収容過多な状態だ。同施設の動物棟は、築44年。病気やシニアの犬用の個別房は、人ひとりが座るといっぱいになるほどの広さしかない。担当職員はこう続ける。 「ここ2年間はなんとか処分をせずに済んでいますが、『殺処分ゼロ』というこの数字は、民間のボランティアさんの存在なしにはまず達成できません。例えば、今日犬が4頭収容されて、ボランティア団体さんが4頭引き出してくださる。県として今すぐ収容を増やせるような大きな箱ものを造るのは予算的にもなかなか難しい。民間の団体さんの協力があるからこそ、ギリギリの状態でしのいでいます」