新型コロナウイルス関連事業を巡る近畿日本ツーリストの過大請求問題は、経営トップが辞任する事態となった。9日に記者会見した高浦雅彦社長は、組織的関与を繰り返し否定。現場が業績への焦りから独断で行ったとの認識を示した。
「会社の責任者として、けじめをつけるために辞任する」。高浦社長は東京都内で開いた会見で、厳しい表情で辞任の理由を語った。「不正の責任をとるということか」と問われると、「再発防止と今後の道筋ができたと判断した」と述べるにとどめた。
同社がこの日公表した調査委員会による調査報告書では、過大請求は計4支店で行われたとした。会見では、経営陣の認識や組織ぐるみの不正ではないかと問う質問が出たが、高浦社長は「組織的な関与は決してない」と強調。支店間での情報共有もなかったとした。
その上で、過大請求の理由について、高浦社長は「『業績を上げなさい』というプレッシャーはなかったが、業績が悪い店舗もあり、(コロナ関連の)新しい事業で業績を向上させようという思いが働いたと思う」と述べた。
報告書では「利益追求を偏重し、コンプライアンスが軽視されている」と企業風土について言及した。指摘を踏まえ、社員の意識改革の徹底や行動規範の制定などの再発防止に取り組むとした。
問題を巡っては、近畿日本ツーリストの元支店長ら4人が逮捕され、自治体が過大請求分の返還を求める動きなどが出ている。
大阪府警は6月、同府東大阪市のコールセンター事業を受託した関西法人 MICE (マイス)支店(大阪市浪速区)の元支店長ら3人を詐欺容疑で逮捕。さらに、静岡県焼津、掛川両市から委託費計約2億2400万円を詐取したとして、静岡支店の男性社員も逮捕された。
約4200万円を過大請求されていた焼津市は同社に返金を求めており、近く支払われる見通しだという。掛川市も返還させるための手続きを進める。また、東大阪市は同社を1年間の入札参加停止にした。