「領域横断作戦時代」の防衛装備・技術協力のあり方 日米共同を前提とした「キルチェーン」構築を

【連載第4回:防衛装備・技術協力を通じた国際安全保障秩序の変化】
日本の防衛は、平時・有事を問わず、自衛隊と日米同盟の2本柱によって支えられている。
普段はその恩恵を感じることはほとんどないが、たとえば、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、Jアラートがわれわれの携帯電話に発信されるとき、ミサイルの熱源を探知するアメリカ軍の早期警戒衛星がその端緒となっている。
つまり、日米が政治や戦略面で連携し、作戦と戦術、技術面で相互運用性を確立していなければ、ほぼリアルタイムで国民に退避を促すようなシステムは実現しえないのである。当然ながら、有事になれば、日米の相互運用性の重要性は、格段に高まることとなる。
新たな戦い方の登場
日米の連携は、今後さらに重要性が増していくだろう。それは、中国の脅威が高まっているからだけではなく、戦い方も変化しているからだ。
ウクライナ戦争でも見られるように、現代戦は、陸海空だけでなく、宇宙・サイバー・電磁波、無人機、さらには情報戦や認知戦などを組み合わせた作戦を複雑に連携させている。さまざまな兵器を組み合わせて用いることにより、相互の弱みを補完するとともに、相手の隙を利用して相乗効果を得ることを目指しているのだ。
現代戦の起源は、直接的には、アメリカ国防総省が1970年代後半に考案したIT技術を積極的に軍事目的に使用する「第2のオフセット戦略」、1990年代に広がった「軍事における革命」や「ネットワーク中心の戦い(NCW)」に求めることができる。
近年、軍民両用技術である人工衛星や大容量通信、人工知能(AI)などが拡散・実装されることによって、アメリカ軍だけでなく、さまざまな国が新しい戦い方を繰り広げられるようになった。
自衛隊は、2000年代初頭から弾道ミサイル防衛などのために、防衛分野にIT技術を多く取り入れるようになった。2012年から尖閣有事に向けた具体的な検討を開始し、2018年に閣議決定された『防衛計画の大綱』に初めて領域横断作戦を盛り込んだ。
領域横断作戦は、陸海空という従来の領域はもちろん、宇宙・サイバー・電磁波を跨いで多様な装備品を接続することが前提となっている。
具体的に言えば、人工衛星や陸海空のさまざまな警戒監視センサーから得た情報を、リアルタイム性や抗堪性(敵の攻撃を受けた場合、機能を維持する性能)のあるネットワークを介して、司令部や部隊に伝送し、AIの支援のもと、これらの情報を分析評価することで、相手方よりも迅速かつ正確な意思決定を行い、最も効果的な物理的・非物理的手段によって対処する作戦である。
「キルチェーン」構築の必要性