「指揮官が結託しもみ消した」「昇任か被害調査かの2択を迫られた」―。防衛省が18日公表した自衛隊内のパワハラやセクハラなどに対する特別防衛監察結果では、上司や窓口担当者らによる被害のもみ消し、口止め工作などの証言が次々と明らかになった。同省の担当者は「こうした事例を見聞きすることで、被害者が相談を諦めている可能性がある」と危機感を募らせる。
今回申告されたハラスメント被害は1325件に上り、防衛監察本部が本人や関係者ら計約400人と面談。その証言も監察結果に盛り込まれた。
それによると、上司の対応に関し、ある隊員は「指揮官が内部告発を上級部隊と結託してもみ消した」と証言。「(昇任のための)学校入校か調査継続かの2択を迫られ、調査中止を承諾させられた」と明かした隊員もいた。「指導には厳しさも必要」「自衛隊はそういう所」と申告を一蹴されたケースもあったという。
相談窓口の対応でも、「『全国に名が知られる』と脅された」「秘密が守られず、加害者に伝えられて事態が悪化した」「『隊長と班長に傷が付く』と言われた」との証言が並んだ。複数の部隊窓口をたらい回しにされたとの証言も寄せられた。
ハラスメントの申告そのものを忌避する組織風土を批判する声が相次ぎ、「誰が告発したか犯人捜しされる」「敷居が高い」と感じ相談しづらさを訴えた隊員もいた。
担当者は「被害の有無を調べずに当事者を異動させて終了といった不適切な対応も多い」と指摘する。「被害防止一辺倒でなく、対応が適切だったかを評価するなど、組織風土の見直しが必要だ」と話した。
[時事通信社]