史上最悪の惨事 大洋デパート火災から50年「何があったか記憶を」

来店客や従業員ら104人が死亡した熊本市中央区の大洋デパート火災から29日で50年となるのを前に、当時、現場で消火活動に従事した市消防局の元消防士、内田平十郎さん(73)=同市北区=による講演会があった。内田さんは後世に教訓を残すため、「大洋デパートで何があったのか、記憶することが必要だ」と語った。
火災は1973年11月29日、市中心部にあった大洋デパート(地下1階、地上9階建て)で発生。3~9階の内部がほぼ全焼し、開店中に起きたデパート火災としては史上最悪の惨事となった。出火原因は不明だが、防火設備の不備や初期消火、避難誘導の練度が欠けていたことが被害を拡大させたとされる。
内田さんは当時、入庁3年目の消防士として、現場に急行した。先輩隊員と隣接していた工事現場の足場を利用してデパート5階から内部に入った。煙が充満して真っ暗闇の中、3時間ほど消火作業に当たった。
講演で当時を振り返り、「先輩に言われた通り、ひたすらホースから出る水の噴霧で煙を飛ばすことばかり考えていた」。鎮火後、デパート内の階段には黒焦げの遺体が折り重なるようにして倒れていて言葉を失った。「自分が消火活動にあたった火事で死者が出たのは、大洋デパートが初めてだった」という。
いざ火災に直面した際、適切に行動するには普段どうするべきなのか。例えば、声を出すことが必要な時について、内田さんは「恥ずかしがらずに大きな声で取り組んでほしい。そうでないと、本当に火事があった際に声が出ない」と訴えた。
2日にあった講演会は企業や自治体を対象にした研修の一環で、会場となった同市北消防署が主催。約20人が聴講した。当時、中学生だったという同市北区の河田日出男さん(65)は「悲惨な出来事だったと改めて痛感した。一つ一つの訓練に真剣に取り組みたい」と話した。【中村園子】