岸田文雄政権の国民世論からの「嫌われっぷり」が、ますます如実になっている。
共同通信が5日に公表した世論調査で、内閣支持率は前回比4ポイント減の28・3%まで下落し、過去最低を更新した。自民党政権で内閣支持率が30%を割り込むのは、2009年の麻生太郎政権末期以来だという。
岸田政権は「税収増の国民還元」「減税」を相次いで打ち出した。2日には所得税・住民税の定額減税や、低所得世帯への一律7万円の給付を含む17兆円規模の経済対策を発表したばかりだった。
その評価は悲惨なものだ。
今回の共同調査によると、減税や給付金支給を「評価しない」とする回答が62・5%を占めた。その理由は、40・4%が「今後、増税が予定されているから」だ。付け焼刃の〝バラマキ〟は、もはや通用しないということだ。
それにしても国民の「岸田政権離れ」「自民党離れ」は著しい。10月22日の衆参補選で、参院徳島・高知選挙区で自民党は大敗した。
衆院長崎4区でも自民党の金子容三氏が初当選したが、薄氷の勝利だったようだ。投開票翌日の23日、西日本新聞がその内幕を報じている。
告示前、金子氏と、父で昨年、政界引退した原二郎氏の親子が福岡市を訪問した。面会相手は創価学会の重鎮。公明党の推薦をもらう代わりに、次期衆院選の比例代表での支援を約束したという。
公明党は告示日、金子氏へ推薦状を手渡した。投開票日当日の共同通信の出口調査によると、公明党支持層のうち91%が金子氏に投票したと答えた。これがなければ勝利は難しかったかもしれない。
衆参補選に続き、同29日に投開票された長崎・大村市長選も自民党を驚愕(きょうがく)させたはずだ。現職の園田博史氏が2万8434票を獲得して当選。自民党と公明党が推薦した北村貴寿氏は1万607票にとどまり、ほぼトリプルスコアの惨敗だ。
原因は、いろいろあるだろうが、いわゆる「公明票」が機動的に動かなかったのか。
10月15日投開票の東京都議補選(立川市選挙区)でも、前回の同市議選でトップ当選した自民党の木原宏氏が、立憲民主党の鈴木烈氏に91票差で敗れ、話題になった。だが大村市長選敗北の衝撃は、その比ではない。自公連立の意義、協力関係が、いよいよ危うくなっているのか。
自公連立のきしみは、岸田首相のガバナンス不全に要因があるとの指摘もある。いまだ「衆院解散・総選挙」への意欲を失っていないともされる岸田首相だが、〝解散権〟でもチラつかせなければ、いよいよ引き締めを図れなくなっているということか。 (政治ジャーナリスト・安積明子)