岸田政権〝自滅〟年内解散見送り、財務省がハシゴ外しか 「減税」方針めぐり閣内、党内から異論 「ポスト岸田」の動き加速も

岸田文雄首相の政権運営が危機に直面している。首相や閣僚らの給与の引き上げを含めた法改正案は、与野党の批判を浴びて増額分を自主返納する方向に追い込まれた。政権浮揚の目玉政策だった「減税」方針では、閣内や党内から〝異論〟が飛び出すなど、空中分解の様相を強めている。内閣支持率が下落の一途をたどるなか、9日には「年内の衆院解散見送り」が一斉に報じられた。まるで、国民世論や党内外の酷評に右往左往して、自滅しつつあるようだ。永田町では〝政局〟の緊張感が高まってきた。

「年内解散見送りへ」「首相 年内解散見送り」「岸田首相 年内の衆議院解散を見送る意向を固める」
読売新聞や朝日新聞、NHKは9日朝、岸田首相が年内の衆院解散・総選挙を見送るとの観測を一斉に報じた。内閣支持率が低迷するなか、岸田首相は経済対策などに専念する意向を固めたという。
だが、与党ベテラン議員は「立て直しどころか、政権維持さえ危うくなった。今後、公然と『岸田降ろし』が吹き荒れる恐れさえある」と指摘した。
前日(8日)、岸田政権の軋(きし)みが如実になった。
国内世論が反発する〝増税路線〟を払拭する切り札だった「減税」方針をめぐり、政権内や自民党内から異論が噴出した。
岸田政権は来年6月から、所得税を1人当たり3万円、住民税を1人当たり1万円減額する方針だが、鈴木俊一財務相が8日の衆院財務金融委員会で、岸田首相がこの「国民還元」の原資だと説明した税収増について、「政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた」といい、還元の原資がないことを明らかにしたのだ。
宮沢洋一自民党税調会長も同日掲載の日経新聞インタビューで、「『還元』といっても税収は全部使ったうえで国債を発行している。それは還元ではない」と述べていた。
岸田首相の説明を、身内が否定する異常事態。最強官庁・財務省と呼吸を合わせて〝減税潰し〟に出てきたのか。
元財務官僚で嘉悦大教授の高橋洋一氏は「財務省の『減税回避の姿勢』が露骨に表れた。政治的に岸田首相のハシゴを外しているようにみえる。倒閣運動にもつながる動きになるかもしれない」と指摘する。
内閣支持率の低迷で、世論の反発が明らかになるたび、岸田政権は方針を二転三転させ、迷走を重ねている。
9日の朝刊各紙でも、岸田首相や閣僚の給与引き上げを含めた法改正案をめぐり、岸田政権が同法成立後、増額分を自主返納することなどを検討していると報じられた。