「運転士の退職理由」バス停掲示はプライバシー侵害? SNS指摘も社長「許可いると思わない」…弁護士の見解は

バス停に掲示された時刻変更のお知らせに、運転士の退職による変更である旨とその退職理由まで記載されていると、X(旧ツイッター)で画像が投稿され話題となっている。
プライバシーの侵害だと指摘する声もあるが、このお知らせを掲示したいわくにバス(山口県岩国市)の社長はJ-CASTニュースの取材に対し「許可がいるようなものとは思わない」「(利用客などに)聞かれるので、答えてます」と回答した。
退職理由に同情する声のほか、プライバシー侵害への指摘も
掲示には変更の内容とともに、次のようなコメントが記載されている。
「退職理由」として、勤務時間や家庭に関する内容も書かれていた。
投稿者は2023年11月7日、J-CASTニュースの取材に、画像の掲示は「錦帯橋」バス停で見つけたものだと回答。旅行先でたまたま見つけたもので、「錦帯橋を観光し、駅に帰ろうとバス停の掲示を確認していた際に目に入った、というような流れです」とした。
Xでは「切実な理由」「それぐらい人が足りなくて切羽詰まってるってことだろう」など退職理由に同情する声のほか、退職理由が公表されていることに対しプライバシーを侵害しているのではないかと指摘する声も寄せられた。
運転士の退職理由の掲示は以前から行っている
いわくにバスの社長はJ-CASTニュースの取材に対し、退職理由を掲示した理由について「お客様からも岩国市役所からも『退職の理由は具体的に何ですか』と聞かれるので、質問に対して答えているだけです」と回答した。運転士の退職理由の掲示は以前から行っていることだとし、それについて市役所等からの指摘はないという。
退職した運転士に許可を得ているかという質問に対しては「許可がいるようなものとは思わない」とした。
プライバシーの侵害ではないかとの指摘については、「どちらかというと聞く側の問題だと思うんです。プライバシー(の侵害)だと思うなら(退職理由を)聞かないんじゃないですか。お客様も聞いてきています。聞かれるので、答えています。聞かれたことに答えないとクレームになるので。悪意は一切なくて、別にあんなのを貼ったところで、辞めた人が戻ってくるわけでもないので」と回答。「岩国市も別に『許可取った上でご連絡ください』などとは言わず、(退職理由を)聞いてきています。利用者の方も(退職理由を)聞いてきますが、そういった人たちは法律をご理解されているのではないでしょうか」ともコメントした。
掲示には12月にも減便すると記載されているが、その事情については次のように説明した。
プライバシーの侵害に当たるか、弁護士の見解は
いわくにバス社長の発言通り、退職理由の掲示はプライバシーの侵害に当たらないのか。J-CASTニュースは弁護士法人リーガルプラス市川法律事務所(千葉県市川市)の小林貴行弁護士に話を聞いた。
小林弁護士は今回のケースがプライバシーの侵害に当たるかどうかの判断について、次のように説明した。
その上で小林弁護士は、減便や時間変更が運転士の退職によるものであることを記載することについては、不法行為に当たりにくいとした。
一方で、退職理由の記載については、不法行為となってしまう可能性があるとして、次のように見解を述べた。
社長は退職理由の掲示は以前から行っているともしているが、小林弁護士は「法的には、そのバス会社で以前から行っているからといって、免責されることはないと思います」という。
「客に聞かれるからといってなんでも答えれば良いというものではない」
社長の「プライバシー(の侵害)だと思うなら(退職理由を)聞かない」「聞かれるので、答えてます」との発言に対しては、小林弁護士は次のように見解を述べた。
J-CASTニュースはプライバシー侵害の不法行為となる可能性があるとの弁護士の見解を社長に伝えたが、社長は「特に感想はありません。当社としてはお客様のお問い合わせに答えているだけです」と回答した。