実は高級食材だが… 千葉でキョン〝爆発的繁殖〟の背景

千葉県南部に生息する特定外来生物のキョンが7万頭にまで増えて農作物被害などが相次いでいる。
キョンの雌は生後7~8か月で妊娠できるため繁殖力が高く、1980年代に施設から逃げ出したとみられる個体が野生下で繁殖。特定外来生物として駆除対象にもかかわらず、ここ10年で3倍にも増えてしまった。
そんな厄介者のキョンだが、実はその肉は美味で、本来の生息地である台湾では高級食材として扱われているのは意外と知られていない。
千葉県君津市でキョンの肉を販売している猟師工房の原田祐介代表は、「キョンは小型のシカの一種で、肉はクセがなく非常に柔らかいのが特徴。肉自体が繊細なので、アヒージョやコンフィ、ローストにするのがオススメです。もちろん、そのままBBQで食べてもおいしい」と話す。
また、その皮も利用価値が高く、武道の道具に使われたり、鷹匠のグローブとしてもシカ皮より爪を貫通させないとして重宝されているという。
肉もおいしく皮も利用価値が高いとなれば、特定外来生物としてもっと捕獲されてもいいはずだが、どんどん個体数が増え続ける裏にはこんな事情が…。
「キョンはシカやイノシシに比べて国や自治体から出る捕獲報奨金が少ない。加えて有害鳥獣駆除の捕獲従事者しか捕獲できず、ほかの哺乳類と違って餌で誘引することもできない。また、シカやイノシシと共通のくくり罠だと捕獲率が著しく下がるので、そもそもキョンを狙う人が少ないんです」(原田代表)
結果、繁殖が捕獲のスピードを上回り、「あと数年で10万頭を超える」と予測する地元関係者もいるほどだ。
千葉県の熊谷俊人知事は「地域課題の解決につながる」として、今年からキョンの肉をふるさと納税の返礼品としたが、同時に捕獲数を増やす施策も求められそうだ。