公立高校入試の受験日と月経(生理)が重なった生徒への対応について、文部科学省は16日の参院文教科学委員会で「追試は可能」とする通知を年内に都道府県などに出す考えを明らかにした。病気や事故などで入試を受けられなくなった受験生に別途実施される追試の対象に、生理による体調不良が加わる。
生理は女性特有で公然と話題にしづらく、タブー視されがちだった。国が統一的な対応を促すことで社会的な理解も広がりそうだ。
生理による体調不良の程度には個人差がある。だが、腹痛や頭痛、眠気など体調がすぐれなくなる「月経困難症」や「月経前症候群」(PMS)に苦しむ人は少なくない。重い症状の生徒は他の受験生に比べて不利になる可能性が指摘されてきた。
だが、文科省が2023年6月に出した通知は、高校入試の合否判定に扱われる調査書(内申書)で生理による欠席が不利にならないよう配慮を求めたものの、追試については新型コロナウイルス感染者らへの配慮に言及しただけで、生理には触れなかった。
毎日新聞は9月に全47都道府県にアンケートを実施。受験日と生理が重なった生徒への対応を尋ねたところ、「追試の対象になる」と回答したのは、15道府県にとどまり、対応に差が生じている実態が浮かんだ。調査結果は11月6日にニュースサイトに掲載し、国に明確な基準がない問題点を指摘していた。
16日の参院文教科学委で、国民民主党の伊藤孝恵氏が毎日新聞の記事を取り上げ、対応差の是正に向けた通知を求めた。
盛山正仁文科相は「月経に伴う症状を含め、本人に帰責されない身体健康上の理由により、やむを得ず用意された試験日程で受験できない生徒の受験機会を確保することが重要だ」と強調。都道府県などに「柔軟な対応がされるよう促していく」 と表明した。
さらに矢野和彦文科省初等中等教育局長が「都道府県にそういうこと(生理による追試)が可能であることを年内に文書により周知したい」と述べた。
ただ、文科省は具体的にどのようなケースが追試の対象になるのか示しておらず、基準の設定が課題となりそうだ。【田中裕之】