2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、東京地検特捜部の検事が元広島市議の供述を誘導したとされる問題で、最高検は25日、検事の発言が「不起訴となることを期待させるものであったことは否定しがたい」として、取り調べが不適正だったとする内部調査結果を公表した。内部で指導したとして懲戒処分の対象とはしなかった。上司の検察幹部の関与は認められないとし、組織的な指示は否定した。
調査は、職員らの違反行為を調べる最高検監察指導部が担当。結果はA4判12ページにまとめられた。最高検は、取り調べの適正確保に向けた指導教育を強化するよう全国に通知した。
供述誘導を訴えていたのは河井克行元衆院議員(60)から現金30万円を受領したとして公職選挙法違反(被買収)に問われた元広島市議の木戸経康(つねやす)被告(68)=1審で有罪、控訴中。20年3~6月に検事の任意聴取を受け、一部をひそかに録音していた。
調査結果によると、検事は元市議に「議員を続けていただきたい」「強制(捜査)とかになると、今と比べものにならない」「克行を悪者にするための調書だ」などと発言した。
最高検は、こうした発言について、元市議が否認すれば強制捜査という不利益が生じることを示唆したものだとして不適正と認めた。一方で、検事が「不起訴で終わる約束はできない」とも述べていたことから、不起訴の約束まではなかったと判断した。
また、元市議は取り調べの録音・録画をされる前に買収の趣旨を否定していたが、検事は元市議の認識を問いただす場面を収録しなかった。最高検は「元市議の不安定な供述状況を糊塗(こと)することになっており、任意性、信用性を担保する録音・録画の趣旨に反する」として、この点も不適正とした。
元市議は河井元議員の公判での証人尋問前の「証人テスト」と呼ばれる打ち合わせの一部も録音。別の公判担当検事からも不起訴を前提とした証言の誘導があったと主張していた。しかし、最高検は、全体として記憶に基づき事実を証言することを促す内容だとして不適正とせず、「より慎重な配慮が必要だった」との指摘にとどめた。
最高検の松本裕監察指導部長は「東京地検に再発防止に向けた一層の注意喚起をした」、東京地検の新河隆志次席検事は「監察の調査結果を重く受け止める」などとコメントした。【井口慎太郎、北村秀徳】