消費税増税でも「10円焼き鳥」据え置き 3代目、父の遺言守り続ける

今回の増税でも値上げはしません――。「10円焼き鳥」で知られる福岡県大牟田市の老舗焼き鳥店「元禄」は、1日からの消費税増税でも看板メニューの値段を据え置く。1989年の消費税導入以来、度重なる増税の波にもかたくなに1本10円を守ってきた。2代目店主、吉岡正二さんが2016年に病死したことによって店を引き継いだ長男凌さん(24)は「焼き鳥だけは値上げするな」という父の遺言を守り続けるつもりだ。【井上和也】
元禄は凌さんの祖父の初代店主、鑑正(かんせい)さんが1950年に創業。来年で70周年を迎える市内で最も古い焼き鳥店とも言われている。旧三井三池炭鉱三川坑に近いことから、鉱員の一番方が上がる時間に合わせ午後4時に開店する。当初の1本5円から85年に10円に値上げして以来、正二さんの代になっても「焼き鳥10円」にはこだわってきた。がんで亡くなる前、息子に20歳の若さで店を継がせることを覚悟した正二さんは「常連さん、中高年層を大事にしろ」、そして「焼き鳥だけは上げるな」と強く言い残して57歳で息を引き取った。
店は、飲み物を注文すると皮とズリの2種類の焼き鳥が5本ずつ運ばれ、食べた本数分だけ計算されるシステム。97年の炭鉱閉山から22年が過ぎた今でも、店には元炭鉱マンも含め常連客が明るいうちからのれんをくぐってくる。凌さんによると、最近はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を見て県外から訪れる人や、かつてはほとんど見られなかった女性だけでの来店もあるという。先代から店を手伝っている母日登美さん(46)は「頑固なところは似てるが、息子の方が夫よりもお客さんと気さくに話す」と成長ぶりを認めている。
父の死から店を守り続けて約3年半。初めて直面する消費増税の風にも、あの時「店は閉めない」と誓った3代目として「10円」の伝統は譲れない。