自民党の派閥の政治資金パーティーの不記載を巡る事件は、6派閥のうち安倍派(清和会)など3派閥が解散を決め、1派閥も解散濃厚となった。これに麻生派(志公会)率いる麻生太郎副総裁が激怒というのが〝定説〟となっているが、実はほくそ笑んでいるという説も出ている。いったいなぜなのか。
政治資金パーティー裏金問題で、岸田文雄首相は党内第4派閥の岸田派(宏池会)の解散を決め、最大派閥の安倍派、第5派閥の二階派(志帥会)に続いて、第6派閥の森山派(近未来政治研究会)も解散濃厚となってきた。
〝岸田の乱〟ともいわれる突然の動きに、麻生氏は怒り心頭だと言われている。かねて派閥存続を主張していただけに岸田首相が自派閥とはいえ、根回しなしで解散を決めたことに立腹しているとされているのだ。21日、麻生氏は岸田首相と都内のホテルで会食した。
政治ジャーナリスト田崎史郎氏は20日放送の「情報7daysニュースキャスター」(TBS系)に出演し、麻生氏が岸田首相に怒っていると明言。岸田首相が派閥解散検討を表明した1時間後に「麻生さんが岸田さんに電話して『なんだ、これは。自分たちのことは自分たちで考えるよ』とタンカを切ったのに対して岸田さんは『そりゃそうですよね。私たちは私たちで考えましたから』のようなケンカ別れのような感じなんですよ」と明かした。
蜜月関係の岸田首相と麻生氏との間に亀裂が入ったことで、政局に突入したと大騒ぎになっているが…全く逆の見方をする人もいる。「岸田派の解散劇に喜んでいるのは麻生氏ですよ」と指摘するのは永田町関係者だ。
第2派閥の麻生派と第3派閥の茂木敏充幹事長率いる茂木派(平成研究会)は今後も派閥を維持する方針を決めている。
「麻生氏はもともと宏池会出身で、麻生派、岸田派、谷垣グループを再結集させる大宏池会構想を持ち、岸田首相も共鳴していた。岸田派解散で、行き場を失った議員が麻生派に流れてくれば、事実上の大宏池会が復活するんです」(同)
岸田派などが勝手に解散したことで、自然と麻生派の勢力が大きくなる可能性が高まっているから、表では怒って裏ではほくそ笑んでいる、というのだ。ただ派閥継続には世論の矛先が向けられることが予想される。また宙に浮いた議員を巡って茂木派との綱引きも必至だが、大宏池会構想が結実した暁には党内最大勢力となるので、麻生氏にとっては決して悪いことではない。
安倍晋三元首相亡き後、永田町で最大の影響力を持つとされる麻生氏だが、名実ともに〝キングメーカー〟に就任することになるのか――。