京大生「大学側は話し合い再開を」 築100年超京大吉田寮明け渡し訴訟

築100年を超える京都大の学生寮「吉田寮」(京都市左京区)を巡り、大学側が寮生らを相手に老朽化した建物の明け渡しを求めた訴訟の判決が16日、京都地裁(松山昇平裁判長)であった。松山裁判長は大学側の請求を一部棄却し、現在寮に住む寮生17人のうち14人の居住継続を認めた。
吉田寮は大正2(1913)年建設の現棟(旧棟)と平成27年建設の新棟などがあり、木造2階建ての旧棟は現在使用されている学生寮として国内最古とされる。
大学側は29年12月19日、旧棟は地震で倒壊の恐れがあるとして安全確保に関する基本方針を公表、新規入寮停止などを求めた。その上で旧棟に住む寮生に30年9月末までの退去を通告した。これに対し一部の寮生が退去を拒否し、大学側は31年4月に明け渡しを求めて提訴していた。
松山裁判長は判決理由で、29年12月19日までに入寮した学生については、大学側から選考権限を委ねられた自治会によって選ばれており「在寮契約」が成立すると認めた。また取り壊しを前提とした耐震診断がなされたとはいえないとした上で、建物の耐震性能の不足を理由に「在寮契約継続が著しく困難となったとは認められない」と述べた。一方、基本方針が公表された29年12月19日以降に入寮した3人については在寮契約は成立しないと認め、明け渡しを命じた。
この日、地裁周辺に集まった寮生らは「勝訴」と書かれた垂れ幕を手に、拍手をしたり抱き合ったりするなどして喜んだ。判決後に記者会見を開いた寮生で京大総合人間学部4年の松村主承(かずのり)さん(26)は「思いもよらぬうれしい判決。この判決を機に大学側が改めて考え直し、吉田寮自治会と話し合いを再開することを願っている」と話した。
判決を受け、京大は「判決内容の詳細を確認しているのでコメントは差し控える」とした。