【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】
東京五輪の受託収賄事件で1億9800万円のワイロを受け取ったとして起訴された高橋治之元電通専務が週刊文春(2月15日号)で、“安倍晋三に裏切られ、森喜朗に嵌められて…”と「初告白」している。
「森さん(喜朗元組織委員会会長=筆者注)から『あなたはマーケティング担当理事です』なんて言われたことは一度もありません。森さんが勝手なことを言っているだけ」
招致委員会から高橋の会社に多額のコンサル料が振り込まれていたことについては、
「招致活動をする時には、当然、渡航費などの経費がかかる。招致委員会にそうした予算はいくらあるのか聞いたら、『ゼロ』というんです。『お金を集めてください』って。それで、一社二億一千万円の協賛金を集めるパッケージを作って、色んな企業に声をかけた。僕だけで約二十五億円集めました。そのうちの三十%は僕の招致活動費に使うという契約を交わしていたので、七、八億円くらいが僕の会社『コモンズ』に振り込まれました」
自身が「見なし公務員」で、スポンサー企業からカネを受け取ることで刑法上の罪に問われる恐れがあるという認識はあったのか問われると、
「僕が理事になった十四年時点では組織委は一般財団法人でしたが、翌十五年に『オリ・パラ特措法』ができて、組織の理事は公務員とみなす、いわゆる『みなし公務員』となることが決定したといいます。でも、この変更について組織委からの説明は何もなく、紙っぺらが送られてきただけ。それも色んな書類に紛れて全く記憶に残っていませんでした」
要は、高橋は民間のコンサルタントとして金集めに協力したので何らやましいところはない、森は法廷に出て本当のことを言ってくれと懇願しているのである。
文春のスクープにケチをつけるわけではないが、高橋側の言い分をそのまま載せるという条件で折り合ったのであろうか、いつもの文春の突っ込みがやや弱いと感じた。
しかし、文春記者とは別に、大手メディアの多くの記者が高橋に接触していたはずなのに、なぜTBS以外のテレビや新聞は報じようとしないのか? それは、彼らが警察や検察に怯えているからである。
私は週刊現代(1996年新年合併号)で、当時、地下鉄サリン事件などの主犯として逮捕・起訴された麻原彰晃の「供述調書」を独占掲載したことがあった。当時、警察も検察も「麻原の調書はない」と言い続けていたが、同じものをいくつかの新聞社が入手していたことは間違いない。だが、彼らは警察、検察の記者クラブから出入り禁止になることを恐れ、出せるはずはなかった。