大村入国管理センター(長崎県)で今年6月、ハンガーストライキ中に死亡した40代のナイジェリア人男性の死因は餓死だった。
「対応に問題はない」とした1日の出入国在留管理庁の調査結果に、支援者らは憤りや不安を口にした。
大村入国管理センターで支援活動を続ける柚之原(ゆのはら)寛史牧師(51)は、今回の調査結果について「間違っていなかったとするのなら、また死者が出てしまう」と批判。「職員の数も足りておらず、収容者への配慮が足りないのではないか」と危機感を募らせた。
入管の問題について取材をしているドキュメンタリーディレクターの高倉天地さん(34)は、ナイジェリア人男性が死亡する数日前にセンター内で見かけたというイラン人男性から話を聞いたことがある。この男性は隣室でハンストを続けていたが、7月上旬、仮放免されていたという。
この男性の話では、ナイジェリア人男性はうつぶせのまま、弱々しくコップの水を頭にかけていた。自身もハンスト中に胸や頭が燃えるように熱くなった経験があった男性は「死ぬかもしれない」と感じ、入管職員に「氷で冷やしてあげて」と頼んだという。
イラン人男性2人が同センターからの「仮放免」を求めた福岡地裁での訴訟で代理人を務める稲森幸一弁護士は「餓死するまで方法はなかったのか」と疑問を呈した。担当する訴訟では男性の1人は自殺を図り、うつ病と診断されたのに収容が続いているという。
「長期収容は、個人の尊厳を侵害している。今回の事件をきっかけに収容のあり方を考え直す時期にきている」と指摘する。
約3年にわたり同センターに収容されている30代のイラン人男性は1日、朝日新聞の取材に「いつ出られるかわからない苦しみがすごくあります」と不安を口にした。母国では民主政治を求める団体に所属していたため迫害されたといい、「安全な国は日本しかない」と訴える。
入管問題を多く手がける児玉晃一弁護士は「男性の仮放免を早くに認めるべきだった」とした上で、医療体制の不十分さも批判。職員が男性の脈を測るなどしたことが調査で明らかになっており、「医師が毎日診ていれば早く異変に気づけたのではないか。常勤医師の確保を最優先すべきだ」と話した。(田中瞳子、角詠之、鬼室黎)
■ナイジェリア人男性が死亡するまでの経緯
2016年7月 大村入国管理センターに収容
18年6月 4回目の「仮放免」申請が不許可
10月下旬 体重71キロ
19年5月30日 職員が男性のハンガーストライキを確認。男性は約1週間前から食事をしていないと説明。体重60・45キロ
31日 医師が点滴・採血をしようとしたが、男性は拒否。腹痛を訴えたため、外部の病院を受診し、点滴
6月1~4日 男性に外部の病院で点滴
5日 男性がセンター内外を問わず治療は受けないと宣言。以降は食事、治療を拒否
8日ごろ 日中も横たわる時間が多くなる
17日 職員の説得で医師の診察を受ける。職員は「このままでは命に危険が及ぶ」と警告したが、男性は「私は自由になりたいだけ」と主張。体重は50・6キロ
18日ごろ 職員の報告書でセンター幹部も男性の治療拒否や体重減を把握。男性は時折水分摂取に応じたが、ほぼ寝たきりに
20日 男性が「お湯がほしい」と訴え、職員がコップにお湯を入れて部屋に置く
24日朝 男性は点滴や朝食を拒否。口を開けたため、職員が水約20ミリを飲ませる
同日午後 男性の息が荒くなっているのを職員が発見。呼びかけに応じないため、病院に救急搬送したが死亡