沖縄の旧石器人はグルメだった!? カニは旬の秋に “優雅な生活”を本で紹介

沖縄の旧石器人は、秋には旬のモクズガニを堪能するグルメだった!? 2016年、沖縄県南城市のサキタリ洞遺跡で世界最古となる2万3000年前の貝製の釣り針が見つかり、旧石器人の新たな一面が注目された。当初より同遺跡の発掘に携わる国立科学博物館の藤田祐樹・研究主幹が8月、『南の島のよくカニ食う旧石器人』(岩波書店、1430円)を出版した。サキタリ洞にたどり着くまでの曲折から、世界最古の釣り針の発見、そして、カニを堪能していたらしい旧石器人の「優雅な」生活を分かりやすくつづっている。
「わずかな証拠を組み合わせ、旧石器人の生活をイメージしていくことは推理みたいで、分かった時はすごく楽しい」と話す。旧石器人も現代人と同じ人間。「生きていく上では、喜びや悲しみ、苦しみなどいろいろあったと思う。発掘しながら、そういうことをつい妄想してしまう」。この「妄想力」が旧石器人のグルメぶりを浮かび上がらせた。第4章「違いのわかる旧石器人」では「妄想」を科学的に裏付けていく過程が描かれる。
「旧石器人は『食べ物が無いから仕方無くカニを食べていた』のではなく、おいしいから食べていたはず」との発想から、藤田さんらは旧石器人がカニを食べた時期に迫った。九州大学比較社会文化研究所(当時)の狩野彰宏さんらの協力の下、カニとともに出土した巻き貝のカワニナの殻を分析。カワニナの死亡時期を調べ、おおむね秋に死んだ=食べられた、ことが分かった。やはり、旧石器人はモクズガニが一番おいしい秋に食べていたようだ。これは出土したカニがいずれも大ぶりだったこととも合致する。

さらに昨夏からは「貝製の釣り針が本当に釣り針として使えるのか?」との疑問に答えるため、自ら貝で作った釣り針を使って遺跡前の川でオオウナギ釣りに挑戦。今年8月、ついに全長83センチのオオウナギを釣り上げた。さらにオオウナギが餌に反応するのは8~12月で、それ以降は動きが鈍り、食いついてこないことが分かった。
また、釣り針を何十個と作るうちに、貝の成長面、つまりきれいに光る面に沿って切り取ると丈夫な針ができることを発見した。「振り返れば、遺跡から出た釣り針はみなピカピカ光っていた」
今後の課題は、カニの季節に洞窟にいたとみられる旧石器人が冬の間、どこへ行っていたのかを探ることだ。現在はそのために周辺地域の遺跡探しも進めている。いまだに謎が多い旧石器時代。研究の進展に期待したい。【上村里花】