若宮ノ東遺跡(高知県南国市篠原)から出土した弥生時代後期末~古墳時代初めの土器片に、2文字の漢字が刻まれている可能性が高いとする調査報告書を、高知県立埋蔵文化財センターがまとめた。この時代に2文字以上の漢字が見つかるのは極めて珍しいとされる。土器片は7~28日(土曜休館)、同センターで一般公開される。入場無料。(小野温久)
報告書は専門家の鑑定などを基に作成された。報告書によると、土器片は2018年度に実施された発掘調査で竪穴建物跡から出土。弥生土器のつぼの首の部分から肩辺りにかけての破片(縦約7センチ、横約11センチ)で、上から右斜め下へと、一部が欠損した「何」ときれいな状態の「不」とみられる2文字が刻まれ、払いや留めを意識しているように見受けられる。焼き上げる前にへらのような工具を使い、刻まれたのではないかと分析している。
「何不」は、漢文で「なんぞ~ざる」と読み、反語で「どうして~しないのか」との意味に使われる。この文字に続く文字があると考えられ、土器片の形状や大きさから2文字を含め最大で7文字がつぼに刻まれていた可能性があるという。文章の一部であれば、国内最古級の文章の可能性もあるとしている。
文字は弥生時代・古墳時代を通して日本に伝わったとされ、国内では「田」などと刻まれた弥生時代の土器が各地で発見されている。同センターの山下英雄所長は「高知産なのか、持ち込まれたものなのか、分からないことは多いが、日本の文字使用の歴史を解明するうえで貴重な資料となるのではないか」と話した。
同遺跡では、これまでの発掘調査で弥生時代後期末~古墳時代初めの竪穴建物跡が数多く見つかり、大集落があったとみられる。平安時代の役所の建物跡とみられる柱穴や、8~9世紀の税となる穀物を納めた高床式倉庫跡なども見つかっている。