医師免許を持たないのに、看護師に指示して点滴注射をさせたとして、兵庫県警は13日、美容関連の事業所(神戸市中央区)の経営者(48)と娘(23)の両容疑者を医師法違反(無資格医業)容疑で逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。
捜査関係者によると、両容疑者は2023年10月~24年5月頃、医師免許がないのに看護師に指示し、美容目的で医療行為にあたる点滴注射を客6人にさせた疑い。現時点で健康被害は確認されていないという。
神戸市保健所は24年9月、無許可で点滴注射などをしたとして、医療法に基づく改善措置命令を同事業所の関連法人に出した。看護師が点滴注射を行えるのは、医師から指示を受けた場合に限られており、事業所側は市に対し、医師によるオンライン診療を経て点滴注射を行っていたと説明。しかし、実際は客6人への診察は行われていなかったという。
コロナ禍を契機に浸透したオンライン診療を活用した美容医療はニーズが高まっているが、安全対策への懸念も指摘されている。厚生労働省によると、医師以外の診察に加え、医師が初診以降は対応していないことが疑われる事例が報告されているという。
同事業所のオンライン診療を依頼されていたという岡山県内の医師は、読売新聞の取材に対し「遠隔診療である以上、現場にいないのだから事業所のすべてを管理するのは不可能だ」と話した。
吉村健佑・千葉大特任教授(医療政策)は「経営者が利益を優先して医師の指示なしで治療すれば、健康被害を生む危険性がある」と指摘する。