子どもの成長を支える場でありながら、ブラック労働環境が問題視されている学校現場。ニュースなどでも盛んに取り上げられているテーマではありますが、実際に働いている教員は、どのような思いを抱いているのでしょうか。
本記事は、公立校の中学教員であるAさん(仮名)に「1人の一般教員として感じている“学校の労働環境の問題点”」を語ってもらう連載企画となります。
・【連載一覧ページ】現役中学教員に聞く「ブラック職場としての学校」
●理不尽な初任者指導に「職場いじめかと思った」
―― 新人教育はどの職場でも行われるもの。“職員室1年目”はどうやって仕事を覚えていくの?
「OJTで仕事をしながら教える」ということになっていて、初任者でもドンドン仕事させて、年度が切り替わった4月1日から「今日からお前も教員だ!」みたいな感じで、1週間後にはもう担任を持たされていたりする。
でも、ちゃんと教えてもらえるとは限らない。
例えば、初任者の場合、ベテランの先生が指導してくれることになってるんだけど、そういう人は1人で何校も見てるから、自分のところに来てくれるの週に1~2回だけ。しかも、教科については聞けないのが普通。初任者指導の先生は自分と同じ教科ではないことのほうが多いから。
―― じゃあ、授業のことは誰に相談するの?
同じ学校で働いてる教員。だけど、同じ教科の先生は何人もいるわけじゃないし、新人、ベテランがバランス良く配置されているとも限らない。「国語教員が2人だけで、1人は教員1年目、もう1人は教員2年目」みたいなこともある。
―― ほぼ新人が、新人教育してるようなものじゃない
その他のアレコレに関しても、初任者をフォローするのは基本的に現場の教員。でも、ボランティアのようなものだから、丁寧だったり、聞かないと教えてくれなかったり、機嫌が悪いとダメだったり……。対応の仕方は人それぞれだね。
―― 「新人教育がないわけではないけど、仕組みが整っていないから行き届かない場合もある」といった感じなのかな
中には、全く教えてくれない人もいる。俺のときがそうだった。
1年目のとき「情報教育担当」を任されて、失敗して怒られたなあ。
―― 情報で教育だから……視聴覚室、パソコン室などの管理をする担当?
と思うでしょ? ある日、全校集会に行ったら「おい、マイクがないぞ」「情報教育担当、誰だ!」と騒ぎになってて。「あ、それって俺の仕事なんだ」と初めて知った。というか、マイクがしまってある場所も分からない。
―― 「情報教育」から「全校集会の準備」を連想するのは、厳しいなあ……
でも、周りは「知っててて当然だろ!」「何でこんなこともできないの?」と本気で言ってくるから、いじめかと思ったよ。
―― そんな状況で、どうやって仕事覚えるの?
教えてもらえないから、ミスしながら1つ1つ覚えていくしかない。でも、新しいことが起こるたびにミスするから「こいつ使えねえな」みたいな雰囲気になる。
●仕事を減らそうにも減らせない“学校はニーズに応え過ぎ問題”
善悪の判断がかなり難しい問題になってしまうんだけど、教員不足の原因の1つに“学校側が保護者や地域の人たちのニーズに応え過ぎ”という問題があると思う。
―― 具体的には?
具体的にいうと……多過ぎてかえって答えにくいな。法的に義務付けられてない“本当はやらなくてもいい仕事”がたくさんあるんだよ。部活しかり、通信簿しかり……。
―― え、通信簿って作る必要ないの?
生徒の出席状況、成績などを記録する公式な書類は「指導要録」といって、作成、保存することになってる。でも、通信簿を作ることは義務付けられてない。要は「成績などを記録する仕事は必須だけど、それを生徒に伝える書類(通信簿)はなくてもいい」というわけ。
それから、中間、期末の定期テストも法的に義務付けられてるわけじゃない。成績はつける必要があるから、代わりに毎回の授業でミニテストをやるような形になるかもしれない。
そうやって“本来はやらなくてもいいこと”を省いていって、法的に義務付けられたことだけをする中学校を作ったら、たぶん大学みたいな場所になるんじゃないかな。授業はあるけど、それ以外は個々の自由というか。
―― 通信簿も定期テストも部活もない中学校ってイメージしにくいな……
そうだよね。本来は学校が“サービス”でやってるだけなんだけど、今では当たり前のものになってる。もしも本当に無くなってしまったら「やるべき仕事をしてない」「仕事をサボってる」みたいに言われるだろうね。一度始めてしまったことは、そう簡単にやめられないんだよ。
他にも例えば、通学路に危ない場所があったら、交通事故防止のために「生徒の通学時間帯に教員を立たせて、登校指導しよう」とかね。良い取り組みだろうけど、教員にとっては勤務時間外の仕事だ。
「子どもたちのために誰かがやるべきこと」をやっていった結果、それが当然視されるようになった。仕事が多くなり過ぎて困っているが、世間の目を気にしてやめることもできない。それが今の学校が陥っているブラックな労働環境なんだと思う。
この問題については世論が変わるか、専門の人を雇ってお金で解決するかしかないと思う。でも、学校にそんなお金はない。
●教員の世界はもう「我慢比べをしてる場合じゃない」
―― この連載は、本記事で9本目。ネット上ではさまざまなコメントがあったけど、どう思った? テーマがテーマだから、批判的な声も少なくないわけだけど……
「公務員のくせに甘えるな」的なコメントは、こっちの状況を知らずに書いてるだけだろうから何とも思わなかった。「甘えてると思うなら、俺の代わりにあなたが教員をやったらいい。毎日朝6時半に学校に来てくれ」という感じ。
ただ、教員と思われる「その程度の苦労で、大変って言うな」「教員としての意識が低い」のようなコメントもあってさ……。教員という仕事のツラさを個人の問題に落とし込んでしまえば、確かにそういう批判もできるかもしれない。
でも、俺としては全体の問題として考えてもらいたいところ。教員の世界には限界が来てると思っていて、今はもう我慢比べをしてる場合じゃないだろう、と。「皆で今の状況を改善しよう」と動けていないのは、こういうところに原因があるんじゃないかな。
不満を感じる人がいても、その声を抑え込もうとする圧力、空気感がさ。職員室と全く同じなんだよね。こんなところまで持ち込まないでくれよ。
(続く)
※本企画は、1人の現役教員の声をそのまま記事化したものです。実際の労働環境は自治体、学校などによって異なる可能性があります。