訪日外国人の数は2024年に3686万人を超え、過去最高を記録。盛り上がる観光業界をして「今後の日本を背負う成長産業」と期待する向きも多い。
だが、その前に解決しなければならない課題が山積みだと考える有識者がいる。
忖度なしの論説で“地方創生界の狂犬”の異名をとり『地方創生大全』がロングセラーになっている木下斉氏と、地方創生における観光分野の専門家で『観光“未”立国~ニッポンの現状~』を上梓した立教大学客員教授・永谷亜矢子氏だ。
ともに地方創生のリアルな現場に立つ2人だからこそ見えている「日本の観光業界」、ひいては「地方創生」について、存分に語ってもらった。
*この記事の続き:「日本が観光で復活する”秘策”は…」”補助金”よりも大事な”今やるべきこと”
「行政の価値観」が追いついていない観光業界
木下:今のインバウンド政策は、いわば“観光ビザばらまき”政策。大前提として人が来ないことには観光は成り立たないので、外国人の誘致は大切です。しかし、観光はどこまでいっても客商売。当然、稼げる地域と稼げない地域が出てきます。
【写真で見る】「地方がどんどん壊される」本当の”原因”を解き明かす木下斉・永谷亜矢子両氏の素顔
しかもこのご時世、主な情報源はネット。もしくは口コミです。
必然的に、もともと外国人に人気の地域や大手資本がグリップしているホテルなどのある地域がリーチしやすくなる。地域格差は広がっていくばかりです。
永谷:ネット検索からSNS検索、AI検索と時代は進んでいるのに、行政の価値観が追いついておらず、現実に即していないことがとても多いですよね。
いまだに紙のパンフレットを作ったり、看板を新しくしたり。
そんなことを相談されるたび、「パンフレットを旅先に置いても意味ないのに、なぜ?」と不思議で仕方がありません。プロモーションするなら、旅行を計画している「旅マエ」に知ってもらわないといけないじゃないですか。
木下:そもそもパンフレットは海外まで届きませんからね。あれはもう、禁止にしたほうがいいレベル(笑)。
永谷:デジタルをうまく使えばいいのに、なかなかそうはなっていません。
観光協会や観光事業者のWebサイトがどうなっているのかというと、間違った情報やもうなくなったお店が掲載されているとか、今どきスマホに対応していないとか、予約機能がないとか。SNSもアカウントがあったとしても、更新されずに野ざらしになっているとか。