〈兵庫知事選のカオス再び〉「帰れ」「オマエが帰れ」立花氏兵庫入りで大混乱「怪文書の元ネタは維新の中で共有されてました!」怪文書作成者のヒントは“書式”に?

〈「県議やめません!」情報漏えいコンビの無反省…岸口氏は本会議中に新たな“怪文書”づくりか…増山氏には「参院選に出て!」と再び立花氏からラブコール〈兵庫県政大混乱〉 〉から続く
2月27日に公示された千葉県知事選挙に立候補した立花孝志NHK党党首が、3月1日から兵庫県内で選挙活動を始めた。県議会の秘密会を隠れて録音し、音声データを立花氏に提供した増山誠県議を応援するために兵庫に来たという。立花氏は街頭演説で、増山氏とともに立花氏への情報提供で維新から処分を受けた岸口実県議からもらった怪文書に書かれていた内容が、文書を受け取る前から維新関係者の間で共有され、何回も伝えられていたと証言した。さらに文書自体の作成者は県職員でないかとの疑念も浮上した。
〈画像〉「退場」「失せろ」攻撃的なプラカードに囲まれながらも増山氏にラブコールをおくる立花氏
「”クーデター計画”なるものは県人事課も相手にしなかったもの」
立花氏は昨年11月の兵庫県知事選にも立候補した。本人の説明によると、その公示当日の10月31日、当時百条委メンバーだった増山氏と神戸市内のカラオケボックスで会い「音声データ」を提供された。面会は増山氏から求めてきたという。
その音声データは、斎藤知事の疑惑を調べる県議会調査特別委員会(百条委)で10月25日に行なわれた非公開の片山安孝元副知事の証人尋問の音声を、隠れて録音したものだった。
さらに翌11月1日にはホテルオークラ神戸で、百条委副委員長を務めていた岸口実県議と仲介役のX氏と会い、「百条委で疑惑追及の先頭に立った竹内英明元県議らは斎藤氏をハメた“黒幕”だ」などと書かれた怪文書を受け取った。
「音声データには、尋問で片山元副知事が、斎藤知事の疑惑を告発しその後自死した元西播磨県民局長・Aさん(60)の県公用パソコンの中から“不倫日記”や“クーデター計画”が出てきた、と話す声が入っています。
片山氏はAさんをおとしめ、告発は信用できないクーデター目的の不正なものだった、と印書づけることでAさんは公益通報者保護法の保護対象ではないと主張する狙いだったとみられます。
しかし、不倫日記なるものは創作か実体験かの区別もつかない内容で、クーデター計画は百条委の前にAさんを懲戒処分にかけようと調べた県人事課も相手にしなかったものです」(地元記者)
その後、立花氏は街頭演説などで、この怪文書や音声データの内容をもとに疑惑の告発者であるAさん(60)や竹内氏らを非難した。
「立花氏は同時に『告発委はうそで斎藤知事はハメられた』と斎藤氏を擁護・応援する2馬力選挙を展開し、その訴えがSNSで拡散し斎藤氏再選の大きな力になりました。しかしそれだけでは済まず、SNSやリアルでの大量の誹謗中傷にさらされた竹内氏は県議を辞職し、1月に急逝しました。自死とみられています」(同記者)
「維新の会の関係者だったらあの文書、平気で作れたと思います」
その立花氏がまた兵庫に現れた。3月1日、演説で立花氏はその理由を、情報漏えいが発覚して兵庫維新の会から離党勧告処分を受けた増山氏の激励だと語った。
「増山さんは(今年夏の)参院選で、できればNHK党から出てほしい。地域政党を立ち上げて2年後の県議選で(斎藤知事)支持派で過半数を取るんです。長期的に兵庫県の県政を考えれば増山さんが兵庫県をまとめる役をします。そういうことをやるために僕は来ました」(立花氏)
このように増山氏に肩入れする理由については、
「増山さんはルールを破った。でも兵庫県民の知る権利に応えたんですよ。それで斎藤さんは再選したんです」とも強調した。
3月1日に2か所で行なわれた街頭演説には「立花退場」「反社会的カルト集団」などと書かれたプラカードを持った数十人が抗議に訪れ、現場は「嘘つき」「帰れ」「お前が帰れ」などの怒号が飛び交い騒然となった。
その中で立花氏が言い始めたのが、岸口氏が提供した怪文書に関することだ。この怪文書について岸口氏は、当初ホテルオークラ神戸で同席したX氏が立花氏に渡したと主張した後、自分も伝達に関与したと説明を変えながら「書いた人が誰か分からない」などと不合理な説明を繰り返している。
そして立花氏は、この岸口氏との面会は、片山元副知事が会いたがっているというので出向いたら岸口氏が来たと説明してきた。そのため演説会場では「あの文書を書いたのは片山元副知事だと思うか」との質問が出た。
それに対し立花氏は、
「片山さんが書いたかどうかで言えばですね、実はあの文書を入手する前から、同じ情報が複数、もう5件も10件も、ぐらいですか。実はあれは、維新の会の中では完全に共有されてました。誰が作ったかというと、維新の会の関係者だったらあの文書、平気で作れたと思います」
と答えたのだ。怪文書を受け取った11月1日より前から複数の維新関係者が同じ内容を口にしていたのを聞いた、ということらしい。
「岸口氏は怪文書を渡したことで兵庫維新の会から除名処分を受けました。しかし、文書の形でなくても同じ内容を立花氏の耳に入れていた維新関係者が他にいたのなら、党はこうした人物も同様に処分する必要があるのではないでしょうか」と県議会関係者は話す。
怪文書の作成者特定につながるヒントとは…
また怪文書をめぐっては、内容だけでなく「形式」を見て、作成者特定につながるヒントが見えてきた、との指摘がある。文書は、大項目の頭に『○』が打たれ、その下の小項目の前には『□』のマークが付けられている。
「この項目分けのマークのつけ方は特徴的ですが、兵庫県庁の特定の部署の文書はこのスタイルでつくられているんです。作成者は、維新の中で出回っていた真偽不明の話を怪文書にまとめた際に、無意識のうちに普段自分が業務で接している文書スタイルのまま作ってしまったのではないかと考えることができます」(県政担当記者)
兵庫県政の大混乱の中で維新関係者が真偽不明の情報を持ち歩き、党から処分を受けたのは今回が初めてではない。
「昨年の衆院選を前にした9月2日、当時現職の衆院議員で、秋の総選挙で落選した日本維新の会の掘井健智氏がJR加古川駅前の駅立ちで、県当局がAさんのパソコンから見つけた中身だとしてAさんの個人情報をべらべらしゃべったんです。
結局その情報の内容自体が誤ったものでした。要するに現職の国会議員が亡くなった人に関する虚偽事実を拡散していたわけです。本人は『記者会から聞いた。どこの記者かは分からない』などとめちゃくちゃな説明をしていました。この時も維新は掘井氏を処分していますが、増山・岸口氏の立花氏への情報提供はその後に起きています」(加古川の政界関係者)
維新の中でまたも出回っていた真偽不明の情報を、“県庁の文書スタイル”に慣れた者がまとめて怪文書を作ったのか――。出所の徹底的な究明が求められる。
※「集英社オンライン」では、今回の記事についてのご意見、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。 メールアドレス: [email protected] X(旧Twitter) @shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班