宿直勤務や事件事故の発生による「呼び出し」など、警察官は特殊な勤務形態を強いられる。警視庁の中でも、特に刑事部門は「仕事第一」が求められる風潮があり、他部門への人材流出をどう防ぐかが課題だった。
「女性刑事の悲惨な声をどうにかしなければ」。仕事と育児の両立が難しいとの声を聞いた警視庁の幹部が動いた。
育休中に昇任試験に合格
2016年、出産や育児、介護などと仕事を両立させるためのサポート制度「けいさぽ制度」が導入された。現在は警察署の刑事部と組織犯罪対策部の職員約260人が利用している。利用者がどんな配慮を求めているかを細かく聞き取り、管理職らと相談。その上で勤務形態や配置などをそれぞれの事情に合わせて柔軟に行っている。
「仕事との両立は想像できなかったが、いまはやりたかった仕事も育児もできている」
池袋署の小川瑞葵(みずき)さん(34)は第1子妊娠後、上司の勧めもあって制度の利用を決断した。復帰後のキャリアについての不安も、出産、育児を経験した先輩や上司との面談などの場で相談することで和らいだという。
育休中には昇任試験にも合格。復帰後は巡査部長として希望だった鑑識課に配属され、事件や事故の現場に駆けつけ、証拠となる資料の採取などに従事する。一昨年には次女も誕生した。再び育休を取り、復帰後はともに警視庁で働く夫とも協力し、自ら希望して宿直勤務もこなす。
管理職の意識改革も
その経験を生かし、小川さんは現在、仕事と育児の両立に関する助言などを行う「子育てアドバイザー」を担う。制度を利用した先輩として管理職との間に立ち、職員の相談や希望の聞き取りを行う。
警視庁では「けいさぽ制度」の導入に伴い、管理職の意識改革を進めた。会議や研修で課長などに制度の意義を説明して浸透させた。結果、限られた人員と時間を有効活用できるようになり、業務の効率化にもつながったという。
担当者は「上司以外の周囲の職員にも広く周知することが今後の課題。個人の事情に合わせた働き方が当たり前になることが理想だ」と話す。
女性の研修後に男性向け研修
一方、広島県警は2021年から、翌年度に育児休業から復職する女性職員の配偶者である男性職員を対象とした研修を行っている。夫婦で仕事と家庭を両立し、女性のキャリアアップにもつなげるのが狙いだ。
毎年秋頃、女性職員の復職前研修後に男性職員向けの配偶者復職前研修を開催している。各研修とも例年20人前後が参加しているという。県警の育児関連制度や先輩職員の体験談、出席者の意見交換を行う。
広島県警警務課の二宮宏美係長は「女性のスムーズな復職には配偶者の協力が不可欠。夫婦で協力し合うための後押しをしたい」と話している。(梶原龍)