「きょうは区切りの日」東日本大震災14年 福島・浪江町の海岸で手を合わせる男性

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から14年となった11日、福島県浪江町の請戸(うけど)海岸は穏やかな朝を迎えた。津波に襲われた請戸地区は死者・行方不明者が154人に上っており、早朝から遺族や関係者らが足を運んだ。
午前5時20分頃、東の空がピンクに染まり始めた。あたりには波の音だけが響いていた。海岸の南方には福島第1原発の施設がうっすらと見える。6時を過ぎたころ、水平線の上を漂う雲の切れ間から太陽が顔を出した。
浪江町で農業を営む佐藤秀和さん(52)は、昇る朝日に向かって静かに手を合わせた。同町出身の佐藤さんは震災発生時、東京で働いていたが、実家の両親が心配で福島県にUターン。今は福島市に住みながら浪江町で米を作っている。
津波で、友人とその家族4人が亡くなった。「きょうは区切りの日。ここで冥福を祈りたかった」
また、請戸地区で10歳まで過ごした稲川孝子さん(80)=東京都北区=は、友人と3人で早朝の海岸を訪れた。稲川さんは昨年11月から浪江町と2拠点生活をして教育ボランティアを行っている。「子供のころの友人が大勢亡くなった。大きな自然災害よりも原発事故がショックだった」と話す稲川さんは「今も心のケアが必要な人がいると感じている」という。
(芹沢伸生)