広島市は今年の平和記念式典について、各国を「招待」してきたこれまでの方法を見直しロシアを含むすべての国と地域に式典の概要を「通知」することを明らかにしました。
平和記念式典を巡っては広島市は毎年、各国の大使などに招待状を送っていますが、ウクライナ侵攻以降、ロシアと同盟国のベラルーシを招待していません。
松井市長は11日、これまでの方法を見直し、ロシアとベラルーシを含む外交ルートのあるすべての国と地域に式典の概要を知らせ、
出欠の判断は相手に委ねるとしました。対象は195の国と地域で、これまでは対象外だったパレスチナ自治政府も含まれます。
■広島市 松井一実 市長
「平和の思い、ヒロシマの心を理解した上で来てくださいねと。あらかじめ注文をつけて、この気持ちを理解して出ていただけるなら申し込んでください」
生後8か月で被爆し、世界に向けて証言活動を続けている近藤紘子さんは。
■被爆者 近藤紘子さん
「私は大賛成。この地に立ってあそこの慰霊碑の前に立ったら、それは一生忘れないと思う」
また、県被団協の箕牧智之理事長は「被爆80年の今年、全ての国に広島へ来てもらうことが一番いい。
ロシアやイスラエルなど全ての国に、特に、原爆資料館を見てもらい、核被害の実相を学んでほしい」と話しています。
(小田成実 記者)
広島市の松井市長がきょう発表した方針を整理します。まず、これまでの「招待状」を送るという形式を見直し、
式典の概要を広く「通知」する方法に変更するとしています。
対象は、外交ルートのあるすべての国と地域で、ロシアやベラルーシを含む、195の国と地域となります。
松井市長は、「平和を願う”ヒロシマの心”を理解した上で参列してほしい」と要望を添えたうえで、来月下旬頃に通知を発送する予定だということです。
(井上アナウンサー)
広島市はなぜ、招待の方法を見直したのでしょうか。
(小田 記者)
広島市は、「各国が紛争地になっているかどうか」「どちらが正しいかどうか」という基準ではなく
「広島市の平和への思いをどう伝えるか」ということで参列要請を行ってきました。
その中で去年、ロシアを呼ばずにイスラエルを呼ぶのはダブルスタンダートではないかなどの指摘があり、もう一度式典の要請方法を改める。
すなわち、「ヒロシマの心」を世界に発信するという式典の原点に立ち返るというねらいがあります。
広島市は、2022年のウクライナ侵攻以降、ロシアと、同盟国であるベラルーシの招待を3年連続で取り止めています。
「式典の円滑な遂行に影響を与える可能性がある」などと理由を説明しています。一方、ガザ地区に攻撃を続けるイスラエルは招待しています。
去年、この対応に「ダブルスタンダードではないか」との批判が噴出しました。
さらに、パレスチナは国家として承認していないことから招待状を送っていなかったことにも疑問や批判の声もあがっていました。
こうしたことから松井市長は式典の原点に立ち返り、「恒久平和に向けたヒロシマの心」を世界に広めたいとしています。
(森アナウンサー)
長崎市でも去年、式典の招待を巡り波紋が広がっていました。
(小田 記者)
長崎市は去年、ロシア・ベラルーシに加えイスラエルを招待しませんでしたが、G7の大使が式典をボイコットする事態に発展しました。
前の長崎市長に受け止めを聞きました。
2022年にロシア・ベラルーシの招待を見送ると判断した当時の長崎市長・田上富久氏。
■前長崎市長・田上富久氏
「ここ数年というのは、難しい判断をしなければならない時期が続いているというふうに思っています。平和祈念式典の本来のあり方として、市民が集う場であって、静謐な環境の中で慰霊の時間を過ごす、共有するということを実現するためっていうことを最優先にしたっていう判断でした。当時ですね」
今年の式典を巡る広島市の判断については。
■前長崎市長・田上富久氏
「平和を希求するという部分を重視しようというふうに、そこに重点を置くことを考えた場合に、やはり、紛争の当事者についてはできるだけ来ていただいて、
そして被爆の実相に触れ、そして被爆地の市民の思いに触れてもらおうというような考え方は当然あっていいわけで、
世界の状況を踏まえたそういう部分に判断の重心をおこうというような意図は感じられると思います」
長崎市は、「今年の式典のあり方について検討していきたい」としています。
世界で、核の脅威が高まるいま被爆80年を迎える広島が、どのようなメッセージを発信していくのか問われています。
【2025年4月11日放送】