八代亜紀さん「ヌード付きCD」 専門家は「リベンジポルノ」指摘

鹿児島市のレコード会社が2023年12月に亡くなった歌手、八代亜紀さんのCDを「フルヌード写真」付きで発売すると発表し、波紋を呼んでいる。八代さんの出身地、熊本県の木村敬知事は16日の定例記者会見で「許しがたい。(発売を)中止すべきだ」と批判。識者はリベンジポルノ防止法に抵触する可能性を指摘する。
レコード会社はホームページ(HP)で、「舟唄」や「雨の慕情」など10曲を収録したCDを21日に発売すると予告。八代さんが20代の頃に同居していた人物が撮影したとする、八代さんの「ヌード写真2枚」を「お宝」として掲載していると説明して購入を呼びかけている。
これに対し、木村知事は会見で「事実であれば、極めて不愉快で許しがたい行為と言わざるを得ない」と批判。「大事なのは八代さんと遺族の尊厳が尊重されることなので、この件が興味本位で取り上げられ、かえって(CDの)販売をもくろむ業者の利益につながることがあってはならないと考えている。(発売は)中止すべきだと思う」と述べた。
CDの発売を巡ってはSNS(交流サイト)でも批判が相次ぎ、インターネット上で発売中止を求める署名活動も展開されている。
レコード会社は16日の毎日新聞の取材に「取材には応じられない」とした。会社はインスタグラムで「(写真の)所有権を有している」と主張し、「発売中止などは行いません」としている。
本人の許諾がない場合、写真の公開は違法との指摘もある。14年に施行された「リベンジポルノ防止法」は、私的に撮影された性的な画像を不特定もしくは多数の者に提供する行為などを処罰対象とし、行為の内容次第で3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。
性暴力被害に詳しい伊藤和子弁護士は八代さんのケースについて「ご本人が写真の公開を許諾していたのか疑義があり、リベンジポルノに該当する可能性がある」と指摘。「現行法ではご遺族の告訴が必要だが、故人の尊厳を踏みにじるこうした事案が今後も起きないようにするため、告訴がなくても処罰できるようにしたり厳罰化したりする法改正が必要だ」と訴える。
甲南大の園田寿名誉教授(刑法)も「八代さんの尊厳を踏みにじる許せない行為だ」と批判。リベンジポルノ防止法の処罰対象になるかどうかについては慎重な立場を示しつつ、「法には限界もある。だからといって、何でもやっていいというわけではない」と語った。【山口桂子、平川昌範】