互いに東京都に隣接するのに、なぜ差が生まれたのか――。総務省が公表した2024年10月1日時点の人口推計で、千葉県は4年連続のマイナスとなったのに、埼玉県は減少からプラスに転じた。東京のベッドタウンと知られる両県で、人口の増減に明暗が分かれた背景には何があるのか。
「数字だけ見ると、うらやましいですよ」。千葉県庁の中堅職員は笑いながら、埼玉との差について心境を述べた。
東京都心に近くて通勤・通学に便利な都市部を抱え、地価も都内より安価な千葉と埼玉。両県とも新型コロナウイルス感染症の影響により、過去3年連続で人口が減ったが、24年は差が出た。
総務省によると、千葉の人口は前年同期比0・08%減の625万1000人。これに対し、埼玉は同0・01%増の733万2000人となった。
両県とも、県外から移り住む人が多い。ただ、転入者数から転出者数を引いて算出する「社会増」は、埼玉0・60%(全国2位)が千葉0・54%(同3位)を上回った。
一方、両県とも出生数が死亡数を下回る「自然減」が続く。これも千葉マイナス0・62%、埼玉マイナス0・59%とわずかな差がある。
ライフルホームズ総研の中山登志朗チーフアナリストは、「(都内の住宅は)価格が高すぎるので、家庭を持った人は埼玉や千葉を(転居先の)選択肢として検討するが、埼玉の方がパイが大きい」と話す。
具体的には、千葉は東京への通勤圏が船橋市や市川市などが中心だ。埼玉はさいたま市、所沢市、川越市などエリアが広いと指摘する。
また、埼玉は千葉に比べて都心への鉄道網が充実していると分析する。都心の不動産価格が高騰する中、埼玉により多くの人が流れる傾向は「今後も続く」との見方も示す。
一方、千葉は人口減に並んで、人口の「二極化」という別の課題も抱える。県北西部などで人口は増えているが、雇用面で課題を抱える北東部、南部では減る傾向が続く。
千葉市は今年4月1日時点の推計人口が98万5335人と、前年同月比で3426人増えた。湾岸エリアなどでマンションの分譲開発が進んでいることが影響している。一方、都心から離れた銚子市などでは過疎化が進み、地価の下落が続く。
県政策企画課政策室は「大事なことは県の活力を維持するため、人口減のペースを緩やかにすること」と説明。人口減が続く地域については、住みやすさや自然などの魅力をPRし、移住や都内との「二地域居住」を促進するという。
人口が増加に転じた埼玉県庁の担当者は、今回の結果をどう捉えているのか。県統計課は、全国的に少子高齢化が進んでいることに変わりはないとしつつ、「(千葉、埼玉が)ともに頑張っていければ」と話していた。【中村聡也、平塚雄太】