保育施設で睡眠中に7か月男児死亡、寝返りで鼻や口が塞がれたのに放置か…施設長ら容疑で書類送検

2022年7月、茨城県土浦市の認可外保育施設で当時生後7か月の男児が死亡した事故で、茨城県警は18日、当時保育業務を担当した施設長の男(75)と保育士の女(44)を業務上過失致死容疑で水戸地検土浦支部に書類送検した。2人が男児の様子の確認を怠ったと判断し、起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。事故から2年8か月余り。関係者の刑事責任が問われる事態になった。(椿央樹、伊能新之介)
発表によると、事故は24時間開所の「ゆうゆう託児園」で発生。2人は22年7月29日夜、生後7か月の男児を預かり就寝させた。男児は寝返りを打った際に鼻や口が塞がれたままになったが、2人は気づかずに放置して窒息死させた疑いが持たれている。保育士は容疑を認めたが、施設長は「もともと具合が悪かったのではないか」などと否認しているという。県は事件の約1か月後、施設に事業停止命令を出した。
再発防止に向けた県の検証委員会の報告書によると、施設では国の基準に反し、1人の保育従事者が複数の乳幼児を保育することが常態化していた。事故発生時、施設には死亡した男児を含む8人の乳幼児がいた。施設長はこの日の午後7時以降、外出している時間があった。また、保育士は施設長の食事の用意などをしており、2人が十分に男児の様子を確認できる状況になかったとみられる。また、施設長は、事故防止に向けて県が実施する研修会に職員を出席させていなかった。
施設を巡り、土浦市は事故直前の22年2月以降、計3回にわたって必要な人数の保育士を配置することなどの改善を指導したが、改められることはなかった。施設長は事故直後の取材に、「保育士資格を持たない私も子供の扱いには慣れているので問題ない」と話していた。市は事故後、指導態勢を強化し、保育士が不足しやすい夜間に抜き打ちで調査に入るなどしている。
認可外保育施設は全国で増加傾向にあるが、施設内で乳幼児が死亡するケースが多数発生している。
こども家庭庁によると、認可外保育施設数は22年度で1万9955件と15年度の約2・8倍に増加。施設内での死亡事故は15~23年で41件発生し、うち25件が0歳児だった。内訳は睡眠中が36件と大半を占め、死因は窒息や病死などだった。
5分に1回様子を確認することが一般的

保育現場の安全管理などに詳しい大阪教育大の小崎(こざき)恭弘教授(保育学)は「保育現場では、乳児は睡眠時に5分に1回の頻度で様子を確認することが一般的だ」と説明。今回の事故では、保育士が男児の異変に気づくまで約3時間を要しており、「特に注意すべき睡眠中のリスク管理を怠っている」と批判した。
その上で「保育現場の事故は管理者の意識や体制のあり方などの要因が複合的に重なって起こる」と指摘。こうした死亡事故が後を絶たないことから、「社会全体で、子供の安全を考えてほしい」と訴えた。
(佐々木勇輝)