<独自>性暴力で損賠訴訟のグロー前理事長・北岡氏、控訴取り下げ220万円支払い確定

障害者の文化芸術活動推進に取り組む社会福祉法人「グロー」(滋賀県近江八幡市)の前理事長、北岡賢剛氏(66)から性暴力やセクハラ、パワハラを繰り返し受けたとして、元職員の女性2人が北岡氏とグローを相手取って損害賠償を求めた訴訟で、1審判決を不服として控訴していた北岡氏が今月11日に控訴を取り下げたことが20日、わかった。
原告側の笹本潤弁護士によると、取り下げによって控訴手続きは終了し、原告の1人、木村倫さん(仮名)に220万円の損害賠償の支払いを命じた1審東京地裁判決が確定した。
令和2年11月13日、木村さんと鈴木朝子さん(仮名)が北岡氏とグローを相手取って計5254万円の損害賠償を求めて提訴した。6年10月24日、東京地裁は、使用者として安全配慮義務違反があったとしてグローに対し、鈴木さんに440万円を支払うように命じた。双方が控訴せず、同判決が確定した。
一方、北岡氏は木村さんに対して約7年の長期にわたってセクハラなどの不法行為を継続したとして、220万円の損害賠償の支払いを命じられたが、控訴していた。
笹本弁護士によると、控訴審の判決は5月28日に東京高裁で言い渡される予定だった。しかし、今月11日の和解期日に突然、北岡氏が控訴を取り下げたという。
裁判を支えた「Dignity for All―社会福祉法人役員による性暴力・ハラスメント裁判の原告を支える会―」は、「賠償額が多くなるのを避けたかったのか、控訴審判決が報道されてフジテレビ内での性暴力事件と合わせて権力による性暴力がクローズアップされるのを避けたかったのか」と推測。訴訟全般については、「社会福祉法人においては、経営陣に男性が多く、従業員に女性が多いという構造がセクハラを誘発する要因にもなっているという問題提起をした点で社会的な意義があった」としている。