風車事故、15年前にも羽根落下し交換…専門家「落雷や強風でもろくなっていた可能性」

秋田市新屋町の「新屋浜風力発電所」(1基、総出力1990キロ・ワット)で2日、風車の羽根が折れて落下し、近くで倒れていた男性が死亡した事故。この風車は約15年前にも落雷で破損した羽根が落下しており、識者はこれまでも落雷などで設備がもろくなっていた可能性も指摘する。風車の運営会社は、調査員を派遣し、事故原因などを調べる方針。(小杉千尋、菊池蓮)
風車の運営会社「さくら風力」(本社・東京都中央区)によると、事故があったのはドイツ製の3枚羽根(1枚の長さ41メートル)の風車。稼働を始めた翌年の2010年12月、落雷で羽根1枚が落下したが、事故後、3枚全てを交換した。今回の事故を受け社員3人が現地に入り、警察と事故の原因を調べるという。
秋田中央署の発表によると、死亡したのは、秋田市、無職の男性(81)。男性の親族によると、タラの芽を取りに行くと言って出掛けたという。
秋田地方気象台によると、秋田市の2日午前10時時点の最大瞬間風速は20・3メートル。気象庁の目安では「やや強い風」から「強い風」に分類され、「風に向かって歩きにくい」とされる強風だが、風力発電機の構造に詳しい九州大の内田孝紀教授(風工学)は「風力発電機は風速10~20メートルで最大出力に達するのが一般的で、風速20メートル程度で羽根が折れることは考えにくい」と指摘する。近年は、国の設置基準が厳しくなり、日常的な強風や台風に耐えられるよう設計されているという。
落雷事故との関連性については「交換しているのなら影響していないのではないか」と話す。ただ、県内の冬場は雷が多いとして、「別の落雷や強風で羽根がもろくなっていた可能性も考えられる」と話した。
事故を受け、県内のある風力発電会社は2日、管理する風車を総点検したという。同社の関係者は「風力発電は、秋田県の人口減に対する起爆剤、エンジンとして期待されている。不安が広がらないよう、事故は起きてほしくない」と懸念を口にする。