読売新聞社が実施した5月の全国世論調査で石破内閣の支持率が発足以降最低タイの31%にとどまったのは、米国の関税措置を巡る交渉への期待度の低さや、コメの価格高騰に対する国民の不満などが背景にあるとみられる。今後望む政権のあり方について聞いたところ、「野党中心の政権に交代」が48%となり、「自民党中心の政権の継続」の36%を上回った。(世論調査部 小田倉陽平)
米国の関税措置などを巡り、日本政府がトランプ政権と行っている交渉に「期待できない」との回答(全体で72%)は、与党支持層でも58%に上り、野党支持層では83%、無党派層では74%だった。今後の日米関係に不安を感じる人(全体の73%)に限ると、「期待できない」は76%だった。
コメの価格は、政府備蓄米を放出しても流通の停滞で価格は高止まりしている。政府の一連の対応を「評価しない」(全体で78%)は、与党支持層でも68%。野党支持層では88%、無党派層では80%に上った。内閣支持層に限っても、66%が「評価しない」と答えた。
コメの価格高騰にとどまらず、物価高や米国の関税措置を受けて、政府が有効な対策を打ち出せていないことに、国民は不満を募らせている。5月調査では内閣不支持の理由で最も高かったのは「政策に期待できない」で38%に上った。内閣発足時の昨年10月調査の20%から18ポイント増えた。
今後の政権のあり方について、「野党中心の政権に交代」が「自民党中心の政権の継続」を上回ったが、4月調査に比べてその差は2ポイントから12ポイントに広がった。「政権交代」を望む人は42%から6ポイント上昇。「政権継続」は40%から4ポイント減った。「政権交代」と「政権継続」を年代別でみると、18~39歳はそれぞれ62%、24%、40~59歳は56%、31%で「政権交代」が上回った。一方、60歳以上は「政権交代」が34%、「政権継続」が48%だった。
中央大の荒井紀一郎教授(政治行動論)は「教育無償化や物価高対策などの政策が内閣支持につながっていない。内閣支持率に変動がない一方、政権交代を望む有権者の割合は高くなっており、自民党にとって厳しい状況だ。参院選に向けて、有権者にわかりやすい政策の成果を出さなければ、政権運営はより厳しくなるだろう」と指摘する。
「自民に風当たり厳しい」…野党は参院選へ攻勢
読売新聞社の全国世論調査で石破内閣の支持率が3か月連続で最低となり、政府・与党は夏の参院選に向け、危機感を強めている。野党は「政権交代」を望む声の増加を追い風とし、攻勢を強める考えだ。
自民党の松山政司参院幹事長は18日、世論調査結果について「自民に対する風当たりは非常に厳しい。危機感を持ち続けている」と語った。公明党の斉藤代表は「コメの価格高騰と米国の関税措置への対応に力を入れて成果を出すことが重要だ」との認識を示した。
「野党中心の政権に交代」を望む回答が48%に達したことに関し、自民の小野寺政調会長は「(野党各党が主張する)消費税減税に対する期待が表れていることは否定できない」とし、物価高などへの対応を急ぐ考えを示した。
野党は勢いづいている。立憲民主党の野田代表は福島県内で記者団に対し、内閣支持率の低迷について「数字こそ民意の表れではないか。政府は真剣に受け止めるべきだ」と述べた。国民民主党の玉木代表も、「野党各党が減税を訴えているのに自民はやらないという差が、政権交代を求める声が高まる大きな要因の一つとなった」と強調した。