基礎年金底上げで立民修正案「丸のみ」、少数与党は「不信任」回避の思惑…立民側は成果作り優先

自民、公明両党は26日、年金改革関連法案を巡る立憲民主党との実務者協議で、基礎年金(国民年金)の底上げ策を盛り込む立民の修正案を丸のみし、今国会の重要法案の成立に道筋をつけた。少数与党下で内閣不信任決議案が成立する可能性もある中で、立民に提出を思いとどまらせたい思惑も働いた。立民側は、夏の参院選を前に、成果作りを優先した形だ。(谷口京子、原新)
「実務者同士では大筋合意した。今週中に何とか衆院での法案通過に向かって努力していく」
3党協議後、自民の田村憲久・元厚生労働相は記者団にこう語った。
法案は与野党が今国会で特に重要と位置づける「重要広範議案」の一つだ。底上げ策を巡っては、厚生年金の積立金を活用することに「流用だ」との批判が出たことや、将来必要となる年2兆円規模の国庫負担が増税の議論につながることから、参院選を前に参院自民を中心に反対論が強く、政府案から削除した経緯がある。立民は「あんこのないあんぱん」(野田代表)と法案を批判してきた。
自民が立民案を受け入れたのは、不信任案の提出を抑え込めるとの期待があるためだ。自民幹部は「立民も重要法案を共同提出すれば、不信任案を出しづらくなる」との見方を示す。底上げ策に世論が反発しても、立民の主導であれば、参院選での争点化を避けられるとの算段も働いた。
一方、立民にとっては、今国会で具体的な成果が乏しい中、参院選のアピール材料にしたいとの思惑がある。野田氏は26日、党本部で記者団に「最も重要な法案だ。ここで結果を出すということは大きい」と意義を強調した。
立民の不信任案を巡る判断にも影響を与えそうだ。野田氏はこれまで、法案の提出可否や内容が判断材料になるとの見通しを示していたが、今回協議のテーブルに着き、大筋合意に達したことで、政府・与党との対立ムードは弱まった。野田氏は「適時、適切に判断する」としているが、「提出のハードルは相当高くなった」(立民幹部)との声が出ている。
修正案では、次回2029年の財政検証の結果を踏まえて底上げ策を実施するとしており、他の野党からは「問題の先送り」との批判も出ている。国民民主党の玉木代表は26日、自身のX(旧ツイッター)で「どうせ先送りするなら、本質的な改革に向けた超党派での議論を深めるべきだ」と指摘した。