神奈川県逗子市は、40年以上続けてきた救急総合病院の誘致を断念した。池子米軍住宅受け入れ条件として国に用地確保を要請したことから始まった誘致だが、医師や看護師の不足の深刻化などで方針を転換。新たな地域医療方針を策定するため、市民説明会を開催する。
桐ヶ谷覚市長は5月30日の定例記者会見で「この40年で病院の役割分担も変化しており、誘致の実現が難しいと判断した。新たな地域医療のあり方を模索する方向に舵(かじ)を切りたい」と説明した。
誘致は、1984年に米軍住宅受け入れ条件として要請した33項目の一つ。国は現在の池子の森自然公園内に用地を確保したが、市は2001年に沼間3丁目の市有地を予定地とした。
市によると、四つの医療法人や社会福祉法人と交渉したが、実現しなかった。18年段階では内科や外科など13診療科、病床数200以上の規模の救急機能を備える総合病院として誘致を目指していたという。
市は23~24年度に医療関係者や公募した市民らによる検討会を設置。検討会は、〈1〉逗子を含む「横須賀・三浦2次医療圏」では、高度急性期の病床数は足りている〈2〉同医療圏でスタッフ不足による非稼働病床が129床ある(23年時点)〈3〉市内の65歳以上人口は45年以降減少する――などの要因から誘致見直しを提案。市も誘致断念の結論に至った。
市内に診療所は多く、市によると、人口1万人当たりの医療機関数は県内トップの12・6件。桐ヶ谷市長は「かかりつけ医から、近隣市の総合病院への連携を図ることが、市民の安心につながる」と述べた。
説明会は6月13日午後6時と14日午前10時の2回、いずれも市役所で行う。