参院選でも「二階VS.世耕」で自民勢力が分裂 候補一本化で野党にも乱れ 和歌山選挙区 激変・参院選2025⑤

衆院選で連続13回の当選回数を誇り、5年超にわたり自民党幹事長を務めるなど、党きっての大物で知られた二階俊博の地元和歌山。政界を引退した二階の後は、三男の伸康(47)に託されたが、自民勢力同士の戦いとなった昨秋の衆院選で伸康は敗北を喫しており、思惑通りに進んでいない。
「有効投票数128票。二階伸康氏82票、望月良男氏46票」
和歌山市内で今年2月に開かれた自民党和歌山県連の拡大役員会で、伸康は元同県有田市長の望月良男(53)を下し、参院選和歌山選挙区の公認候補に選出された。
「結果にかかわらず、(選ばれた)公認候補者の選挙に尽力する」
拡大役員会では投票に先立ち、伸康、望月、投票者全員が誓約書を県連に提出。その背景には、昨秋の衆院選で自民勢力が分裂するという苦い経験があった。
県連会長の石田真敏は投票後、「ノーサイド」を強調したものの、望月は「応援してくれた方と話をしたい」と、出馬の可能性を示唆した。
自民派閥のパーティー収入不記載を巡る「政治とカネ」の問題を受け、俊博は昨秋の衆院選和歌山2区への不出馬を決めた。党は伸康を俊博の後継としたが、同じ不記載問題で自民を離党した元経済産業相の世耕弘成が参院和歌山選挙区から和歌山2区へくら替え。伸康は自民の公認を得ながらも、無所属の世耕に敗れていた。
〝世耕派〟をアピール
和歌山県連ではこれまで、俊博と世耕による主導権争いが続いた。令和4年の知事選。いったんは世耕が推す総務官僚の擁立を決めたものの、俊博の影響力が強いとされる県町村会が反対。最終的に、国民民主党の衆院議員だった岸本周平=知事在職中の今年4月に死去=に推薦を出した。
「二階対世耕」の争いは、参院選にも引き継がれる。
今年4月、望月は自民を離党し、無所属で和歌山選挙区から立候補する意向を表明した。昨秋の衆院選で世耕を応援したという経緯もあり、6月14日の政策発表会では、世耕のポスターや激励の祝電を披露。自らが〝世耕派〟であることを事実上アピールした。
こうした望月の動きについて、ある自民県連幹部は「二階(伸康)氏と比べ望月氏の名前は浸透していないので、世耕氏を前面に出してきた」と冷ややかだが、衆院選で伸康に勝利した世耕の影響力を無視することはできない。
「維新応援は0%」
自民勢力の分裂は、野党勢力にとっては好機となるはずだが、足並みの乱れが目立つ。
6月6日に立憲民主党と日本維新の会が岐阜と和歌山の両選挙区での候補者一本化を発表した。
和歌山では立民の村上賀厚(のりあつ)の公認が取り消されたが、党本部による一方的な決定に県連側が激しく反発。県連代表の山本忠相は「リベラル的な考えの人の
投票先はなくなる。怒りにも似た悲しみがある」と述べた。
形の上では、維新の浦平美博(53)に相乗りすることが決まったとはいえ、今回の候補者一本化では立民の県内組織などに浦平の支援は義務づけられておらず、立民県連は「参院選は自主投票」と決議。山本は「維新の候補者を応援する確率は0%」と語気を強めており、収拾のめどは立っていない。(敬称略)
=おわり