シャモの窃盗が強盗傷害に発展 懲役8年判決を受けた34歳無職の男 裁判長は「盗癖の根深さは際立っている」厳しく指摘

2024年7月、福岡県鞍手町に住む男性(当時77)の自宅からシャモを盗み、これを止めようとした男性に重傷を負わせるなどした来原満一被告(34)に対し、福岡地裁は6月20日、懲役8年の判決を言い渡した。
服役を繰り返しながらも盗癖から抜け出せない男の犯行について井野憲司裁判長は「その盗癖の根深さは際立っている」と厳しく指摘した。
4度の服役経験も犯行止まず、社会復帰わずか3か月で再犯
判決などによると鞍手町に住む来原満一被告(34)は、窃盗を繰り返して4度服役したにもかかわらず、社会復帰後わずか約3か月余りで再び犯行に及んだ。
最初の事件は2024年7月6日。
来原被告は福岡県鞍手郡内で8万円相当のアルミホイール付きタイヤ2本を窃取した。
次の事件は約1週間後 住宅からシャモ1羽と木箱を盗み77歳男性に見つかる
来原被告は2024年7月15日午前、鞍手町の住宅敷地内からシャモ1羽と木箱を盗み、この家に住む男性(当時77)に発見された。
男性(当時77)が来原被告の胸ぐらをつかんで逃走を阻止しようとしたところ、来原被告は自分の車に乗り込み、ドアで男性の身体を挟んだ。
さらに悪質だったのは、男性(当時77)が開放していた運転席の窓から手を入れて来原被告の胸ぐらをつかんでいる状況で、あえて車を急発進させた点だ。
この結果、男性(当時77)はガードレールに衝突して転倒し、左肩腱板断裂など約5か月を要する重傷を負った。
検察側「車は走る凶器」「根深い盗癖に基づき躊躇なく犯行」懲役10年を求刑
論告求刑公判で、検察側は「自動車は走る凶器であり一歩間違えれば重篤な傷害を生じさせかねない非常に危険な態様」と主張。
来原被告が社会復帰後わずか3か月余りで犯行に及んだ点についても「根深い盗癖に基づいて躊躇なく犯行に及んだ」と述べ、懲役10年を求刑した。
来原被告「シャモは買ったものだ」と主張も裁判所は退ける
来原被告は、「シャモは2万円で買い取った物で、車を急発進させてもいない」と主張。
男性(当時77)との間で購入の合意があったと一貫して述べたが、福岡地裁はこの主張を退けた。
福岡地裁は男性の証言が、事件直後の110番通報内容や衣服の汚れ方、負傷状況といった客観的証拠と整合していることを重視。
一方、来原被告の主張については「事件直後における110番通報の内容そのほか客観的に認められる事情と整合しない」と判断した。
福岡地裁は判決理由で「被告人は、窃盗を繰り返して4度服役したにもかかわらず、社会復帰後約3か月余りのうちに、他人の敷地内においてタイヤを盗んだりシャモを盗んだりしており、その盗癖の根深さは際立っている」と指摘している。
裁判所「不合理な弁解に終始する来原被告に反省の情を見出す余地はない」
福岡地裁(井野憲司裁判長)は「強盗傷人について不合理な弁解に終始する来原被告に刑事責任の軽減につながる反省の情を見出す余地はなく、出廷した交際相手の監督の弁に重きを置くことも難しい」として、懲役8年の判決を言い渡した。