20日投開票の参院選では住宅問題が争点の一つとなっている。都市部を中心に住宅価格や家賃が高騰し、住まいの確保が切実な問題となっているためだ。低所得者らに向けた補助制度に加え、価格高騰の一因ともされる外国人による不動産購入の制限などを巡って、各党の議論が交わされている。(鈴木瑠偉)
大和ハウス工業は6月、東京・錦糸町に戸建て住宅のモデルハウスをオープンした。5階建てまで対応できる重量鉄骨造で、価格は6億円だ。
2世帯住宅に店舗やゲストルームも盛り込み、住宅部分は防音技術を駆使したシアタールームも備える。岡田陽事業部長は「マンション価格が高騰する中、戸建て住宅に注目が集まっている。特に富裕層からの需要が強い」と話す。
大和ハウスでは2024年に東京23区内で高額分譲住宅を契約した人のうち、半数が外国人だった。今回の商品も主なターゲットは外国人富裕層となる。「セカンドハウス」としての購入や、購入者が滞在しない期間は民泊として活用することも想定しているという。
住宅価格の高騰は都市部で顕著だ。不動産経済研究所によると、24年度の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンションの平均価格は前年度比7・5%上昇の8135万円となり、過去最高だった。コロナ禍前の19年度(6055万円)と比べ、34・4%上昇した。
戸建て住宅も同様の傾向にある。不動産調査会社の東京カンテイによると、4月の東京都内の新築戸建て住宅価格は初めて6000万円を超え、19年同月比で17・3%上昇した。
背景には、人件費や建材費が増えた分の価格転嫁に加え、外国人による不動産購入があるとされる。三菱UFJ信託銀行が不動産大手に行った調査では、24年度後半に東京都千代田区・港区・渋谷区で販売したマンションのうち2~4割は外国人が購入していた。
海外と比べると、日本の住宅価格は割安とみなされており、「投資目的の購入も多い」(大手ハウスメーカーの担当者)という。
外国人の不動産取得や投機目的の購入を巡る主張は各党で濃淡が分かれる。
国民民主党は、外国人の投機目的の不動産取得に税負担を求める「空室税」の導入を掲げる。参政党は外国人による住宅購入に制限を導入し、土地購入は原則禁止すべきだと訴える。
自民党は公約で、外国人の不動産所有について「法令に基づいて厳格かつ毅然(きぜん)として対応する」と記載。石破首相は6日のテレビ番組で「外国人だろうと日本人だろうと投機目的で持つのはよくない。早急に実態を把握し、対応する」と述べた。
共産党は住宅を投機対象とすることを防ぐため、外国人に限定せず、購入者が自ら居住することや、一定期間の転売禁止を契約に盛り込むといった規制を打ち出している。
家賃補助による支援を打ち出す政党もある。公明党は、低所得者や子育て世帯に家賃を補助する「住宅手当」の創設を主張。立憲民主党も新たな家賃補助制度の創設を訴える。選挙戦では地方活性化や空き家対策も含め、住宅・不動産を巡る課題の解決に向けた活発な議論が求められる。